今月初めに「南京の真実」第1部試写会の告知があったにもかかわらず、この映画を正面から取り上げた報道が依然ないということを、先週の投稿で書きました。しかし、一昨日、ついに「南京の真実」を正面から取り上げた記事をReutersが発表しました。
http://www.reuters.com/article/entertainmentNews/idUST30723520071126?sp=true同社の日本語版サイトで検索したところ、該当する記事は見付かりませんでした(検索に問題があるだけで、記事の日本語版が発表されている可能性は否定しきれませんが)。 代わりに「南京大虐殺に異論を唱える映画『南京の真実』」と題する、撮影現場を取材した動画を見ることができます。内容はReutersの英語版サイトで公開されているものとまったく同じで、ナレーションも英語です。
http://jp.reuters.com/news/video?videoId=71471動画はさておき、できるだけ多くの人が記事の内容を知ることができるよう、いつものように記事全文の試訳を掲載します。
戦犯として絞首刑となった日本の戦時中の指導者たちはイエス・キリストのような殉難者だった、と完成予定の映画を制作する日本人監督が述べた。ナショナリストの支援を受ける、この映画は、1937年の南京大虐殺を中国による捏造と主張する。
水島総の「南京の真実」は、日本による、この都市(南京)の攻略と占領を扱った数々の映画の中で、最新のものである。この出来事は、死傷者数をめぐる諸説の著しい違いから、70年間、日中関係の問題の種となってきた。
石原慎太郎東京都知事をはじめとする日本のナショナリスト著名人の支援を受け、一部は寄付金により資金をまかなう、この映画は、ドキュメンタリー部分と、連合国の裁判で有罪となり、戦犯として絞首刑に処された日本の指導者たちの最期の24時間を描くフィクション部分とで構成される予定である。
「彼らは、世の罪を背負うために十字架につけられたイエス・キリストに似ている。かつての日本の良い部分と悪い部分のすべてを背負って死に、絞首台に進んでいった」と水島はReutersに語った。
「私の映画は、真の日本人というもの、そして、彼らがどのように死と向き合うかを描く映画だ。ある意味で、彼らは最後の『七人の侍』だ。」無力な農民を守るため、侍の一団が盗賊と戦う日本の黒澤明監督の名作に触れながら、そう付け加えた。7人の日本人が戦犯として絞首刑に処された。
来春公開予定の水島の映画を中国政府は非難している。しかし、監督によると、自分の調査によって、30万人が死亡したとする北京の言い分は、誤りであることが証明されたという。
「中国政府の立場は今や『大虐殺があったと認めることを条件に、取引をしよう』というものだ。しかし、すべてが嘘で、政治的に動機付けられた嘘を受け容れない以上、それに応じることはしない」と語る。
他の映画はプロパガンダ
第2次世界大戦後の連合国による裁判では、国民党政権下の中国の首都、南京を日本人が占領した際に、一般市民および捕虜14万2000人が殺害されたと推定された。
日本は、侵攻した日本軍により多数の一般市民が殺害されたことを認めながらも、いかなる推計も示していない。
水島は、中国が世界政治で優位に立つために、死傷者数をでっち上げたと主張する。さらに、当時、南京にいた欧米人を共産党の「スパイ」として、彼らによる目撃証言も信用しない。
南京(事件)をめぐって、この都市の占領から70周年にあたる今年は、7本の映画の製作が予定されている。その中には、南京(事件)を取り上げたアイリス・チャンのベストセラーにもとづく中国の映画も含まれる。水島はこれらの映画の大半を「プロパガンダ」と呼ぶ。
「中国人が世界に売り込もうとしている、自分たちがどのように日本の軍国主義の犠牲になったか、どのように家族や自由を守るために闘ったかを描く映画と同じように、声高に薄っぺらなヒューマニズムを叫ぶ、そんなものを作る気はない」と水島は言う。
戦後の日中関係は、北京(中国政府)がいう、戦時中に日本兵が働いた残虐行為を認めようとしない東京(日本政府)側の態度によって、損なわれてきた。
日本の小泉純一郎元首相の在任中に関係は冷え込んだ。数百万人の日本の戦死者とともに有罪となった戦犯をまつる東京の神社に、彼が毎年、参拝したことが主な原因である。
小泉は2006年9月に退陣し、後任者が関係修復にこぎ着けた。
後任者らの努力の一環として、日中の歴史学者が両国間の歴史観の隔たりをせばめるために、共同で研究に当たっている。
水島監督の言い分がかなり詳しく紹介されている記事になっています。 しかし、その主張をそのまま書くだけでなく、日本政府も多数の一般市民が日本軍に殺害されたことを認めているといった、監督の意見に反する現実も併せて指摘しています。
記事の最後に小泉元首相時代からの日中関係の変遷が簡単に記されています。この枠組みの中で見ると、「南京の真実」は、中国との関係改善に努める日本政府の動きに逆行するものという位置付けになるでしょう。
記事の中での「南京の真実」の説明を読んでいると、この映画が3部作になるということが書かれていません。 製作側がそうした説明をしなかったのか、それとも、説明を受けたものの、Reuters側で省いたのか、どちらかは分かりません。 もっとも、仮に3部作の第1部という説明をまったく受けずに、南京事件から10年以上後のA級戦犯(この事件と無関係な者を含む)の処刑を再現する映画だといわれたら、取材に訪れた記者は当然、どこが南京映画なのかと不審に思うはずですが。
映画は「ドキュメンタリー部分」と「フィクション部分」からなると書かれています。 日本語で「フィクション」というと、つい純粋な虚構という意味に取られがちですが、英語では必ずしもそうでなく、事実と虚構を組み合わせたものという意味合いも持っています。
「他の映画はプロパガンダ」という小見出しの付いた後半部分に、南京事件を題材とする「7本の映画の製作が予定されている」と書かれていますが、それらの題名は書かれていません。 ただし、 「アイリス・チャンのベストセラーにもとづく中国の映画」は明らかにサイモン・ウェスト監督の中・米・英合作映画「紫金山」を指しています。このブログで以前、紹介した8月21日付のReutersの記事は、ほかに次の4本の映画を取り上げています。(1)テッド・レオンシス制作のドキュメンタリー「南京」(ビル・グッテンタグ、ダン・スターマン監督)、(2)香港で製作予定の「南京・クリスマス・1937」(中国語名「南京聖誕:1937」、イム・ホー監督)、(3)前回、紹介したAsian Pacific Postの記事が話題にしていたカナダ製作の「アイリス・チャン ザ・レイプ・オブ・南京」(ビル・スパヒック、アン・ピック監督)、(4)陸川(ルー・チューアン)監督の中国映画「南京!南京!」。 さらに、先月には独・仏・中合作映画「ジョン・ラーベ」(フローリアン・ガレンベルガー監督)が中国で撮影を開始したそうです。これらに「南京の真実」を加えると、7本。それらの映画の「すべて」でなく、「大半」を水島監督は「プロパガンダ」と見なすわけですが、「プロパガンダ」でない例外は自分の映画以外にあるのでしょうか。