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2007/12/18

南京大虐殺映画合戦、迫る(Hollywood Reporter 07/12/13)

前々回、カナダのNational Post紙の記事を取り上げたときに、12月13日付で「南京の真実」に触れた記事は2点、どちらも扱いは小さいと書きました。しかし、その後、日付の勘違いに気付いたり、新しい記事を発見したりで、この映画に言及した13日付の記事は、4点に増えました。しかも、そのうち1つは「南京の真実」の話題を主にしたものです。そこで、今回は、そのHollywood Reporterの記事を紹介します。

http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/news/e3i46053bf6151a3fb4d09f056ec8393f73
第2次世界大戦が終わり、長い年月が過ぎた。しかし、太平洋の2大国は今なお、歴史を我が物にしようと戦っている。木曜日(12月13日)に日中は南京大虐殺70周年を迎える。

米国、ヨーロッパ、中国の映画会社が、ある出来事を描いた10本以上の映画を製作し、公開を予定している。その出来事は、1937年12月13日、大日本帝国軍の兵士がこの都市
(南京)に入城したときから、始まった。事件を描いた作品の1つ「紫金山」は、中国で撮影が進められており、サイモン・ウェスト(「トゥームレイダー」)が監督を務める。予算は5300万ドルで、アイリス・チャンのベストセラー『ザ・レイプ・オブ・南京』を映画化したものになる。

しかし、日本軍が荒れ狂う中、30万人の一般市民が死に、数万人の女性が強姦されたとする中国の主張を、日本のナショナリスト映画製作者らは斥ける。

こうした過激ナショナリストらが中国のプロパガンダとみなす動きに反撃して、水島総監督は映画「
南京の真実」のロケ撮影を進めている。

右翼系のインターネットテレビ局「チャンネル桜」の社長でもある水島によると、「大虐殺」の証拠は捏造されたもので、中山成彬元文科相を含む約10人の政治家が彼を支持しているという。

「真実」は、水島が制作するドキュメンタリー3部作の第1部。第2部で、東京裁判が検討される。日本のナショナリストの主張によれば、この裁判は勝者の裁きに過ぎず、戦時中の首相、東條英機は大日本帝国の敗北の責めを負って、絞首台に臨んだという。そして、最後の第3部で、米進駐軍による他の7人の戦犯の処刑が扱われる。7人の中には、南京侵攻の立案者として告発された松井石根も含まれる。

水島は映画の製作費として、支持者から約180万ドルの寄付金を集めている。3部作の第1部が公開される日は、決まっていない。しかし、いつ上映されるか、中国政府が注目していることは確かである。

紫金山」の予算を「5300万ドル」としたり、水島監督の支持者として中山成彬元文科相の名前を挙げたり、大虐殺の「証拠は捏造されたもの」という監督の言葉が紹介されたり、「南京の真実」製作のため「180万ドル」が集まったと伝えたりといったように、最近のIndependentAFPの記事と似かよった記述がところどころで見られます。

ただし、3部作の第2部、第3部の内容を書いているところは、この記事独自の点といえるでしょう。それによると、第2部は東京裁判と東條英機の処刑、第3部は「他の7人の戦犯の処刑」を扱ったものになるといいます。第1部の内容は、はっきりとは書かれていませんが、おそらく南京事件の検証を予想していると思われます。 しかし、「南京の真実」公式サイトを見ても分かるとおり、実際は、第1部が東條はじめ7人の処刑を描くものになるとのことです。第一、東京裁判で死刑となったのは、東條も含め7人であって、上で引用した「他の7人」という表現は成り立ちません。記事の執筆者は確かな情報をもたずに、この部分を書いたと思われます。

また、3部作全体を通した題名である「南京の真実」が、あたかも第1部の題名であるかのような書き方がされています。原因は記者の情報不足にあるのでしょう。もっとも、単にそれだけでなく、東京裁判やA級戦犯の処刑という主題と、この題名とが容易に結び付かないということもまた、そうした誤解が生じる要因になっていると思われます。

記事の中で、水島監督をはじめとする「南京の真実」製作陣は「ナショナリスト映画製作者」または「過激ナショナリスト」と呼ばれています。

2007/07/03

レオンシスの「南京」不正是正めざす(Hollywood Reporter 07/07/03)

前回投稿した6月19日に、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬)の「南京問題小委員会」(委員長・戸井田徹)が内外の報道関係者を招いて、総括記者会見を開いたそうで、APやReutersの関係記事がインターネット上でも公表されました。

AP記事(リンク先はInternational Herald Tribune):http://www.iht.com/articles/ap/2007/06/19/asia/AS-GEN-Japan-Rape-of-Nanking.php
Reuters:
http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUST214128

このうちAPの記事では、「南京の真実(仮題)」賛同者の1人で、水島監督と一緒に「チャンネル桜」の番組に出演した経験がある戸井田委員長の「南京で大虐殺はなかったと確信している」 という言葉が紹介されています。 そこで、Reutersがまた「ナショナリスト著名人の支援を得た日本の1グループが……」と例の調子で、この映画に軽く触れることを期待したのですが、今回はそれはありませんでした。

さて、これまでもっぱら映画祭の中で上映されてきた米国のドキュメンタリー映画「南京」が今日7月3日から中国で一般公開されるとのことで、ハリウッドのエンタテインメント業界誌Hollywood Reporterがこの件で記事を発表しています。途中、間接的にですが、「南京の真実(仮題)」への言及が見られるので、今回はその記事を紹介します。

http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/international/news/e3ie1d5fd3d6e69dbc79dd9c20ca05ca4ce
ドキュメンタリー映画「南京」が火曜日(7月3日)に北京でプレミア上映される。映画は、戦前の中国の首都で1937年に日本軍が一般市民に対して行った大虐殺を、取り上げる。プロデューサーに転じたAOLのテッド・レオンシス副会長が手がけた。

月曜日
(7月2日)にレオンシスは、この映画の製作は、営利のためでなく、昨年秋にAOLの第一線から退いた折に自ら始めた「フィルムアントロピー」(filmanthropy)活動の一環であると語った。彼が中国の首都を訪れるのは、AOLが調査を開始し、4月に当地に事務所を開いて以来、これが初めて。

レオンシスは3つの中国を注視していると語る。1つは、欧米でほとんど知られていない貧しく、農業本位の中国内部。2つめは、中国中央電視台や上海文広新聞伝媒集団に代表される「公式」で、政府主導の中国。3つめがインターネットやWeb 2.0の新しい「ロックンロール・チャイナ」。このうち最後のものが「アメリカ以上に資本主義的だ」という。

「私の意図は純粋なものだ。中国にお願いしたいのは、必要であれば、どのような手段を使ってもいいので、百万の人々が確実に、この映画を見るようにすること。インターネット上で無料で、さらには海賊版DVDでの視聴さえもかまわない」と述べる。

サンダンス映画祭でシンクフィルムとフォルティシモが配給権を購入した「南京」は、レオンシスが200万ドル以上の私財を投じて、製作された。レオンシスによると、中国では香港と上海の映画祭で3月、6月に初上映され、ここ数週間で、国営の中国電影集団により土曜日
(7月7日)から中国の100以上の劇場で公開されることが決まったという。

(米)本国では、この映画は、今なお北京と東京の間で常に論争の種になっている出来事から70周年を控えて(11-12月に)公開される。日本では、少数の保守派のグループが、大虐殺の発生を否定しており、その中には、「南京」に対抗する企画を進める映画製作者もいる。

初めてオリンピックを開催する中国に世界の視線が集まる2008年に、中央電視台はこのドキュメンタリー映画を中国の1億3600万世帯に向けてケーブルテレビで放送する。

映画は500時間に及ぶ記録映像や生存者へのインタビューを編集して、日本軍が上海から南京へ進む過程で行った組織的な虐殺、および周囲の中国人を救うため団結した南京駐在の外国人――ナチのビジネスマンやアメリカ人宣教師を含む――の物語を語る。

反戦映画であるが、政治的な火種にするつもりはなかった、とレオンシスは語る。

「世界中でアメリカ人が不人気なときに、多くのアメリカ人が中国人を助けたという話は、状況改善に寄与するかもしれない。これは『シンドラーのリスト』のようなものだ」と言う。

故アイリス・チャンのベストセラー『
ザ・レイプ・オブ・南京』を読んで、レオンシスはこの、彼にとって最初の映画の製作を思い立った。中国では、中央電視台が映画の製作に携わり、ジョージタウン大の同窓生で、CAA中国代表を務めるレオンシスの友人ピーター・ローアーから後方支援を受けた。

CAAの顧客のウディ・ハレルソンがアメリカ人宣教師の役を演じている。この宣教師が目撃した殺人について記した日記が、映画の中で一部、朗読される。レオンシスによると、ハレルソンは無償で映画に参加したという。

「『フィルムアントロピー』(「変化をもたらす」映画作りという自分の目標をレオンシスはこう呼ぶ)の韻律
(または基準)が映画製作を一変させる」と彼は主張する。

「映画産業は現在、完全に破綻しており、実業家として参入する気になれない。不正を正すために、この映画を作った」とレオンシスは語る。そして、これまでに話をした中国人は、この映画が、中国がこれまでに見た外国のドキュメンタリー映画の中で、最大のものになるだろうと言っている、と付け加えた。

レオンシス制作の「南京」の紹介として興味深い記事ですが、このブログの本来の目的から外れるため、この映画に関する立ち入った論及は避けます。ここでは、記事に2度出てきた「フィルムアントロピーfilmanthropy)」という聞き慣れない言葉に触れるだけにとどめます。

この言葉は、“film”(映画)と“philanthropy”(人類愛、慈善活動)を組み合わせたレオンシスの造語らしく、適当な訳語が思い浮かびません。意味については、Answers.comというサイトの解説が参考になります。

http://www.answers.com/topic/filmanthropy

それによると、「慈善事業や福祉に関心と資金を集めるために、映画(もっぱらというわけでないが、主にドキュメンタリー映画)を利用すること」をいうそうで、このジャンルの映画製作は通常、「映画産業の外に身を置くか、その外側で資金を集めた人々によって、進められる」とのことです。そのようにして作られた映画の具体例として、レオンシスの「南京」のほかに、「不都合な真実」(デイビス・グッゲンハイム監督)や「ファーストフード・ネイション」(リチャード・リンクレイター監督)の名前が挙がっています。

さて、このブログの本題である「南京の真実(仮題)」への言及は、本当にそっけないものが途中に見られるだけで、題名(仮題)も明記されていません。 エンタテインメント業界誌にとって映画関係の話題は関心事であるはずですが、 この記事を書いた記者は、この映画にはそれほど興味がないようです。記事によると、南京での「大虐殺の発生を否定」する日本の「保守派」(「南京の真実(仮題)」関係者を含む)は「少数」とのことです。