前々回、カナダのNational Post紙の記事を取り上げたときに、12月13日付で「南京の真実」に触れた記事は2点、どちらも扱いは小さいと書きました。しかし、その後、日付の勘違いに気付いたり、新しい記事を発見したりで、この映画に言及した13日付の記事は、4点に増えました。しかも、そのうち1つは「南京の真実」の話題を主にしたものです。そこで、今回は、そのHollywood Reporterの記事を紹介します。
http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/news/e3i46053bf6151a3fb4d09f056ec8393f73第2次世界大戦が終わり、長い年月が過ぎた。しかし、太平洋の2大国は今なお、歴史を我が物にしようと戦っている。木曜日(12月13日)に日中は南京大虐殺70周年を迎える。
米国、ヨーロッパ、中国の映画会社が、ある出来事を描いた10本以上の映画を製作し、公開を予定している。その出来事は、1937年12月13日、大日本帝国軍の兵士がこの都市(南京)に入城したときから、始まった。事件を描いた作品の1つ「紫金山」は、中国で撮影が進められており、サイモン・ウェスト(「トゥームレイダー」)が監督を務める。予算は5300万ドルで、アイリス・チャンのベストセラー『ザ・レイプ・オブ・南京』を映画化したものになる。
しかし、日本軍が荒れ狂う中、30万人の一般市民が死に、数万人の女性が強姦されたとする中国の主張を、日本のナショナリスト映画製作者らは斥ける。
こうした過激ナショナリストらが中国のプロパガンダとみなす動きに反撃して、水島総監督は映画「南京の真実」のロケ撮影を進めている。
右翼系のインターネットテレビ局「チャンネル桜」の社長でもある水島によると、「大虐殺」の証拠は捏造されたもので、中山成彬元文科相を含む約10人の政治家が彼を支持しているという。
「真実」は、水島が制作するドキュメンタリー3部作の第1部。第2部で、東京裁判が検討される。日本のナショナリストの主張によれば、この裁判は勝者の裁きに過ぎず、戦時中の首相、東條英機は大日本帝国の敗北の責めを負って、絞首台に臨んだという。そして、最後の第3部で、米進駐軍による他の7人の戦犯の処刑が扱われる。7人の中には、南京侵攻の立案者として告発された松井石根も含まれる。
水島は映画の製作費として、支持者から約180万ドルの寄付金を集めている。3部作の第1部が公開される日は、決まっていない。しかし、いつ上映されるか、中国政府が注目していることは確かである。
「紫金山」の予算を「5300万ドル」としたり、水島監督の支持者として中山成彬元文科相の名前を挙げたり、大虐殺の「証拠は捏造されたもの」という監督の言葉が紹介されたり、「南京の真実」製作のため「180万ドル」が集まったと伝えたりといったように、最近のIndependentやAFPの記事と似かよった記述がところどころで見られます。
ただし、3部作の第2部、第3部の内容を書いているところは、この記事独自の点といえるでしょう。それによると、第2部は東京裁判と東條英機の処刑、第3部は「他の7人の戦犯の処刑」を扱ったものになるといいます。第1部の内容は、はっきりとは書かれていませんが、おそらく南京事件の検証を予想していると思われます。 しかし、「南京の真実」公式サイトを見ても分かるとおり、実際は、第1部が東條はじめ7人の処刑を描くものになるとのことです。第一、東京裁判で死刑となったのは、東條も含め7人であって、上で引用した「他の7人」という表現は成り立ちません。記事の執筆者は確かな情報をもたずに、この部分を書いたと思われます。
また、3部作全体を通した題名である「南京の真実」が、あたかも第1部の題名であるかのような書き方がされています。原因は記者の情報不足にあるのでしょう。もっとも、単にそれだけでなく、東京裁判やA級戦犯の処刑という主題と、この題名とが容易に結び付かないということもまた、そうした誤解が生じる要因になっていると思われます。
記事の中で、水島監督をはじめとする「南京の真実」製作陣は「ナショナリスト映画製作者」または「過激ナショナリスト」と呼ばれています。