カタールの衛星テレビ局アルジャジーラが今月21日に「南京の真実」を取り上げた番組を放送しました。
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/CAC0F0E6-B00E-420E-81A4-64CD3D073B67.htm番組の冒頭はVTRで映画を紹介するものになっています。水島監督の談話に加えて、松岡環氏による南京事件に関する証言の聞き取り活動の様子も映され、日本国内でも、この映画に賛否両論があるという形で扱われています。残りは、映画を代弁する役割で賛同者の加瀬英明氏も参加して、米国の歴史学者リチャード・チュー教授(ロチェスター工科大学)と司会者の3人による鼎談で、ちょっとした討論になります。その中で司会者は加瀬氏の主張に対して懐疑心を隠せない様子です。映像メディアは取り上げないという、このブログの趣旨から外れるため、これ以上、掘り下げた紹介はしませんが、1月25日の完成披露試写会の映像が番組の途中で流され、この映画の第1部完成を伝える海外メディアの報道が1つ増えたことになります。
さて、今回は昨年12月21日付の米国のエンタテインメント誌Varietyの記事を紹介します。
日本軍による数十万人の中国人虐殺から70周年を記念する式典が12月に入って中国の戦時中の首都、南京で催された。日本軍がこの都市を侵攻した際に起こった、この事件が(中国)国内外の映画監督の想像力をかき立てている。
南京レイプは、この問題を取り上げた完成したばかりの、または、今、製作中の映画によって、監督たちに非常に人気のある主題となっている。
侵攻を生き延びた人々と話し、今や老人となった犠牲者から強姦や殺人に関する恐ろしい証言を聞けば、この物語になぜ脚本家やプロデューサーが心を奪われるか、容易に理解することができる。
しかし、こうした企画に集中することは、困難なことになりかねない。というのは、政治的な微妙さから、映画監督たちは息を潜めることを余儀なくされるからである。
スタンリー・トンは、(南京)事件を扱う自作「日記」はドキュメンタリーにしないと語った。一方、オリバー・ストーンは、大虐殺を取り上げたケヴィン・ケントの小説を映画化するために、ケントと協議してきた。
中国政府は、南京の過去の出来事に関する映画がナショナリズムに寄与することを望んでいるだろう。しかし同時に、日本との交易に依存しており、この国をいら立たせることは望まない。
アカデミー賞を受賞したドイツのフローリアン・ガレンベルガー監督は、中国のシンドラーと呼ばれるナチ党員ジョン・ラーベの物語を撮影してきた。ラーベは攻撃中の(南京)市内に安全区を設立して、数十万の人命を救った。
ラーベの日記をもとにして上海で撮影される、この映画の出演者には、ウルリッヒ・トゥクール――目を見張るほどラーベと似ている――やダニエル・ブリュールがいる。また、中国の新進女優、張静初(チャン・チンチュー)も出演する。
映画の予算は2000万ドルで、中国の華誼兄弟伝媒集団とドイツのホフマン&フォーゲス・エンタテインメントの共同製作。来年末の劇場公開を予定している。
サイモン・ウェストの「紫金山」は製作費5100万ドルの米・中・英合作。アイリス・チャンの国際的なベストセラー『ザ・レイプ・オブ・南京』を原作にしながら、中流階級の中国人母娘の目を通して大虐殺を描く。
香港のイム・ホー監督は「南京・クリスマス・1937」の脚本をまず審査に通過させるために、苦労した。この作品も他の企画同様、日本人の手から中国人を守ろうとした外国人たちの奮闘に、焦点を当てる。予算は3500万ドルで、海外で受け入れられる可能性がある。
中国電影集団と江蘇広播電視が共同で陸川(ルー・チューアン)の「南京!南京!」の出資を引き受けたと報じられている。映画は今、天津で撮影が進められている。
製作費1200万ドルのこの映画は、香港を拠点とする寰亜電影と北京の星美伝媒からも融資を受けている。陸は、脚本が(当局の)認可を得られるよう、5ヶ月にわたる説得を続けた。
(ジェームズ・)ボンド映画を監督したロジャー・スポティスウッドが指揮する「黄石の子供たち」は、「南京レイプ」から始まり、中国を横断して孤児を避難させたイギリス人ジャーナリスト、ジョージ・ホッグ(ジョナサン・リス=マイヤーズ)の足跡を追う。ラダ・ミッチェル、ミシェル・ヨー、チョウ・ユンファも出演する。
AOLが製作し、今年すでに中国で公開された長編ドキュメンタリー映画「南京」は、中国史上、最も多くの人が見たドキュメンタリーといわれる。
アカデミー賞受賞歴のあるドキュメンタリー監督ビル・グッテンタグと、ダン・スターマンが共同で監督し、元AOL副会長のテッド・レオンシスが制作した「南京」は、記録映像と俳優による朗読を組み合わせる。ウディ・ハレルソン、スティーヴン・ドーフ、ユルゲン・プロフノウ、マリエル・ヘミングウェイをはじめとする俳優が朗読を担当した。
これら注目作のほかに、小規模なドキュメンタリーや映画が多数、製作されている。その中に、(南京)事件はなかったと主張する日本人の取り組みがあり、議論を呼んでいる。
「南京の真実」は「注目作」の扱いを受けておらず、題名も明記されていません。しかし、最後の段落にある南京「事件はなかったと主張する日本人の取り組み」は明らかに、この映画のことを指していると思われます。ここで仮に「取り組み」と訳した語は、原文では“takes”で、複数です。水島監督のほかに日本で南京事件を否定する映画を作る動きがあるという話は聞きません。しかし、「南京の真実」が3部作で、3本と数えられていると考えれば、複数形が用いられていることも納得がいきます。
記事で題名や監督の名前が明記されている映画作品、または、その企画は8本を数えます。最初のスタンリー・トンの「日記」とオリバー・ストーンによるケヴィン・ケントの小説の映画化の話はともに、昨年3月のTime誌の記事に言及されています。しかし、その後、具体的な進展があったという情報はありません。特にストーン監督に関しては、米国のジョージ・W・ブッシュ大統領を主人公にした映画の制作に乗り出したという報道が最近、ありました。そのため、南京事件関係の映画に取りかかる見込みは当分、ないと思われます。
フローリアン・ガレンベルガー監督、ウルリッヒ・トゥクール主演の「ジョン・ラーベ」は、過去に取り上げたFrankfurter Allgemeine Zeitung紙の報道にあるように、着実に撮影が進んでいる模様。製作会社のホフマン&フォーゲス・エンタテインメントのサイトによれば、公開は来年2009年の2月になる予定です。
サイモン・ウェスト監督の「紫金山」は昨年7月31日付のReutersの報道によると、その日にクランクインしたそうですが、製作会社のサイトを見ると、未だに「撮影準備中」(Pre Production)と表示されています。しかし、12月に入って中国のポータルサイト新浪網で予告編が公開されており、とにかく製作が続けられていることは確かなようです。
イム・ホー監督の「南京・クリスマス・1937」(中国語名「南京聖誕:1937」)は一時、昨年末に撮影開始予定と報じられていましたが、未だに撮影に入ったという報道は聞かれません。
陸川監督の「南京!南京!」は昨年10月から撮影を始め、12月には撮影現場を取材した動画をReutersが公開しています。
前回の投稿でも触れたロジャー・スポティスウッド監督の「黄石の子供たち」は、これまで「苦海」という題で紹介されてきたものです。映画はすでに完成し、4月に中国での公開を予定しています。主人公のジョージ・ホッグは実在の人物で、実際に日中戦争のさなかの中国で教師として活動していますが、映画はかなり創作が入っているようです。
最後のビル・グッテンタグ、ダン・スターマン両監督のドキュメンタリー「南京」は現在、全米各都市を回って公開中。ノミネートされていた米国脚本家組合(WGA)ドキュメンタリー脚本賞は今月9日に発表があり、受賞は逃しました。記事の中で「AOLが製作し」たと書かれていますが、AOL自体は、この映画の製作と無関係で、あくまで同社のテッド・レオンシス副会長が個人としてプロデューサーを務めたというのが事実のようです。
ちなみに、カナダのビル・スパヒック、アン・ピック両監督の「アイリス・チャン ザ・レイプ・オブ・南京」は記事の中でまったく取り上げられていません。「注目作」でない「小規模な」映画の1本という扱いを受けているようです。