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2009/04/03

「南京」残忍さと勇気の物語(Star Tribune 08/01/31)

4月になりました。昨日2日からドイツでフローリアン・ガレンベルガー監督の「ジョン・ラーベ」が公開。さらに、陸川(ルー・チューアン)監督の「南京!南京!」が22日から中国で公開されるとのことで、この2本を扱った報道が海外で続いています。しかし、以前は南京事件関係の映画の話題になれば、ついでに触れられていた「南京の真実」への言及が、今回は見当たりません。「ジョン・ラーベ」を取り上げた報道が多く、すべてに当たる余裕がないので、もしかしたら見過ごしているのかもしれません。しかし、「南京の真実」という題名や水島監督の名前を含む英・独・仏語の報道は、このところ皆無のようです。

そんな事情から、今回は昨年1月31日付の映画評を紹介します。米国ミネソタ州の地方紙Star Tribuneに載ったもので、ビル・グッテンタグ、ダン・スターマン両監督のドキュメンタリー映画「南京」を取り上げています。その翌日の2月1日から映画がミネアポリスの劇場で公開されるのを機に、発表されたもののようです。

http://www.startribune.com/entertainment/movies/15073871.html

この中に水島監督とその映画に対する言及が見られますが、恥ずかしながら、そのことに気付いたのが遅れたため、こうして1年以上たってからの紹介となりました。参考に全文を訳出します。

1937年、当時の中国の首都、南京に侵入した日本軍が約20万人の非戦闘員を虐殺した。その証拠が第2次大戦が終わったとき、連合国の検事によって明らかにされた。平服に着替えて逃亡する敗残兵狩りという口実の下に始まった中国人男性の大量殺害は、やがて欲しいままの略奪、性的暴行、殺人となっていった。この事件は今日、南京レイプとして知られる。

近代史上、最も血なまぐさい大虐殺の1つである、この殺戮の生存者たちは今、歴史からの抹消に直面している。あの蛮行から70周年に当たる昨年
(2007年)、日本の水島総監督が残虐行為を否定する修正主義的なドキュメンタリー映画を制作した。水島によると、「絶対の真実がある。それは、大虐殺がなかったということ。子どもたちには、日本が野蛮な国だと思って成長して欲しくない」という。同監督の企画にはナショナリストの国会議員、学者、放送人が支持を寄せている。

幸い、この町の攻囲を目撃した欧米人の報告によって、事件が実際にどれほど無残なものだったか記録に残されている。これが、ビル・グッテンタグ(短編ドキュメンタリー「ツイン・タワーズ」でアカデミー賞受賞)、ダン・スターマン両監督の力強いドキュメンタリー映画「
南京」が語る物語である。

年代物のニュース映画によって
(日本軍の)侵入以前の美しい、公園のような南京の姿を見ることができる。そこには多数の欧米人が住み、活動していた。記録映像はまた、陸戦隊の到来に備えて日本が町を爆撃する様子も写し出す。逃げる余裕のある中国人は去っていき、在留の外国人は避難を命じられた。中国人の友人、隣人が危険の中に取り残されるのを見て、22人の欧米人が自分の安全を求めず、勇敢にも町に残ることにした。その中には、イリノイ州出身の宣教師で教員のミニー・ヴォートリン、中国生まれのアメリカ人外科医ボブ・ウィルソン、良心的なドイツ人実業家で、中国のオスカー・シンドラーと呼ばれることになるジョン・ラーベといった人々がいる。2平方マイルの「安全区」の中、彼らは結束して20万人もの中国人を保護した。彼ら欧米人はまた虐殺を撮影し、そのぞっとするフィルムを密かに持ち出してもいる。その映像は映画の中で年老いた中国人生存者のインタビューに交じって引用される。

このような欧米人目撃者の日記や手紙の一部をウディ・ハレルソン、ユルゲン・プロフノウ、スティーブン・ドーフ、マリエル・ヘミングウェイといった俳優が朗読する。そうしてカメラを前に朗読することで、歴史を、通常の画面外のナレーションでは決してできないほど、生き生きしたものにしている。身辺の残虐行為には勇敢な態度を示しながら、第3帝国の真の性格を見逃していたラーベ役のプロフノウは、困惑するほど複雑な人物を演じている。目の当たりにした恐怖に取りつかれるヴォートリンの姿――彼女は何千人もの人命を救ったものの、自分では失敗したと思っていた――を表現するヘミングウェイの演技からは、謙遜がときに傷つきやすさになりうることを知る。英雄とは恐れずに行動するのでなく、むしろ、恐れにかかわらず行動する者であるという格言を彼女は証明している。「
南京」は暗欝だが、最終的には人を前向きにする。危機に瀕していても野蛮に抗する勇敢な個人がいることを教えてくれるからである。

評の対象で、このブログでも何度も取り上げた「南京」ですが、昨年末から日本国内の市民集会の中で何度か上映されているようです。

一読すれば分かるとおり、「南京」に対する評価は肯定的で、その意義を裏付ける、いわば、引き立て役として、「南京の真実」が登場します。途中に引用されている水島監督の言葉は、「第一部撮影完了報告大会」の席上のもので、2007年12月14日付のReutersの記事からほとんどそのまま引用しています。映画の内容に立ち入ったことは何も書かれておらず、この映画に対する冷やかな態度も含めて、他のメディアの報道をそのまま踏襲したものといえるでしょう。

このように一昨年から昨年初めにかけて海外メディアから“白眼視”されてきた「南京の真実」は今や、それを通り越して、ほとんど“無視”されるに到ってしまいました。今年前半の完成を目指すという第2部によって、こうした事態が打開されるのでしょうか。水島監督のいう「情報戦争」の行方をこれからも見守りたいと思います。