少し遅くなったものの、1月25日の完成披露記者会見および試写会の様子を伝えるUPIの記事が30日に発表されたので、今日はそれを取り上げます。
http://www.upiasiaonline.com/Politics/2008/01/30/tokyo_producer_revisits_nanking_massacre/7416/日本の知識人、社会運動家、ジャーナリスト、党派を超えた政治家の一団が南京事件の真実を議論する国際的な「裁判」を主催しようと準備している。事件は1937-38年の冬に中国の南京で起こり、よりはっきりと南京大虐殺とも呼ばれる。
インターネットによる文化フォーラム「チャンネル桜」を主宰する水島総は金曜日(1月25日)に東京で、「南京国際大法廷」と称するものをこの夏に東京で開く、と語った。
戦時中の出来事に関しては、これまで数多くの著作が出版されている。中でも、日本兵が中国人一般市民に対して行ったといわれる残虐行為を描いたアイリス・チャンの1997年のノンフィクション『ザ・レイプ・オブ・南京 第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』が最も有名である。
しかし、水島は日本国内の多くの人々とともに、その種の記述が伝える事柄に異を唱えている。彼によれば、「あったという人たちも含めて、公の場で堂々と公平に議論を重ねれば」、組織的な大虐殺やレイプがなかったことが明らかになるという。
この民間の計画は、70年前に占領された南京で起こった出来事に関する、あらゆる見方を取り上げるものになる、と水島は言う。中国やハリウッドで製作された映画のプロデューサーたちに参加を呼びかけるという。
日本による南京占領の災禍を何らかの形で描き出す約10本の映画が世界中で製作され、公開されている。発表された数字をもとに水島が計算したところによると、それらの映画に約300億円がかけられているという。
水島の主張によると、中国政府が主導しているという、この大規模なプロパガンダキャンペーンは「侵華日軍南京大虐殺遇難同胞記念館」の改装と並行して進められている。
1年間にわたる大規模な改修と拡張を終え、昨年(2007年)12月に記念館が再び開館すると、隈丸優次・在上海日本総領事が中国政府に対し懸念を表明した。総領事は「事実に疑いのある展示がある」とし、展示によって「日本人への恨みや反感」が引き起こされかねないと警告した。総領事はまた、さまざまな研究者が疑問視する数字である「犠牲者30万人」を記念館が示していることも批判した。
水島は「南京の真実」と題する映画のプロデューサーでもあり、金曜日に東京で映画の試写会を開いた。映画の資金は、彼の言い方に従えば、全国5500人以上の人々からの寄付金によってまかなわれた。彼らは、戦時中の日本にとって最悪の出来事の真相が明らかにされるところを見たいと思っているという。映画は当時の中国の首都で、城壁に囲まれた南京の町が占領された直後に、市内で撮られた映像を紹介する。市内で大量殺害が行われていたことを示すものは映画に一切、出てこない。
映画の後半は、極東国際軍事裁判でA級戦犯とされた7人の日本の軍指導者が1948年に絞首刑に処されるまでの経緯を詳細に再現したものになっている。
水島は7人の苦闘や愛国心の噴出、巣鴨プリズンで教誨師の僧侶と経を唱える中で彼らが見出した慰めを描いていく。拘置所が映画のために忠実に再現された。
映画の末尾では、1937年の南京攻略に参加した何人かの元兵士が自らの経験を証言する。彼らの話によれば、南京門を入った軍の指揮官で、東京裁判で死刑判決を受けた松井石根大将から厳しい軍紀を課されたという。ある兵士はむやみな殺人や略奪や強姦をしないよう命じられたと話した。
戸井田徹衆議院議員によると、東京裁判の弁護側の資料が今年の3月31日から公開されるという。この資料によって、ずっと昔に起こったものの、今なお日中両国民の間で激情をかき立てる力をもつ出来事に新たな光が投げかけられることが期待される、と同議員は語る。
記者会見と試写会の両方の様子を伝える記事で、映画の内容にも少し立ち入って触れています。ただし、映画に対する感想をうかがわせる文句は見られません。
前回、紹介したAFPの報道同様、ここでも、水島監督がこの夏に開催する予定の「南京国際大法廷」が大きく取り上げられており、この話題が記事の導入になっています。
記事は全体に水島監督をはじめとする「南京の真実」関係者に配慮している印象を受けます。他のほとんどの報道が水島監督や支持者を「ナショナリスト」とか「右翼」と呼んでいたのに対し、ここではそのような表現は見られません。また、アイリス・チャンの著書に触れたところで「日本兵が中国人一般市民に対して行ったといわれる残虐行為」として、「といわれる」を挿入しているところにも、そのような配慮が感じられます。もっとも、それを扱ったチャンの著書は「ノンフィクション」と呼ばれていますが。
水島監督は「多くの人々とともに」旧日本軍の残虐行為に「異を唱えている」といわれています。記事の中に、映画の製作費を「全国5500人以上の人々からの寄付金」によってまかなったと書かれているので、その辺りの数字を念頭に「多くの人々」といっているのかもしれません。
途中、拡張工事を終えて再開館した南京大虐殺記念館の展示に隈丸優次・在上海総領事が見直しを申し入れたことが書かれています。しかし、映画と直接、関係のない話題で、ここで言及することには少し無理がある気がします。この話題の中で「犠牲者30万人」として出てくるのが記事の中で唯一示される南京事件の犠牲者数の推計です。ただし、それも「さまざまな研究者が疑問視する数字」といわれています。同じUPIの記事でも、前回の製作発表のときの報道に見られた「大半の歴史家は、大日本帝国軍が1937年に南京で20万人の中国人を殺害したと考える」といった指摘は今回の報道には見られません。