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2007/12/15

日本人映画監督「南京なかった」(Reuters 07/12/14)

12月14日はもともと「南京の真実」第1部「七人の『死刑囚』」完成試写会の開催が予定されていました。しかし、映画の製作が遅れ、試写会は来年1月25日に延期されました。そこで、この日は「第一部撮影完了報告大会」なるものが開かれたそうです。今回は、その大会の模様を伝えるReutersの報道を紹介します。

http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUST249248

日本人は南京で大虐殺を働いていないと発言しなければならない、金曜日(12月14日)に開かれたシンポジウムで映画監督がそう述べた。その前日に中国では、30万人が死亡したとされる事件から70周年が記念された。

水島総の新作映画「
南京の真実」は1月に試写会が開かれる。この映画は、(南京事件)70周年に合わせて製作される海外の一連の映画に対抗する日本のナショナリストの試みである。1937年に中国国民政府の首都を日本軍が攻略した後に繰り広げた大殺戮が、それら海外の映画によって語られる。

1本はアカデミー
(長編)ドキュメンタリー賞のノミネート最終候補に入っている。

中国にとっては、日本がいわゆる南京レイプをどのように記憶しているかということが1930年代から1945年に国土の大半を苛酷に占領した隣国が、その過去をどれだけ悔いているか判断するための指標になっている。70年を経てもなお、かつての交戦国は過去の出来事について合意に達することができない。

「絶対の真実がある。それは南京大虐殺はなかったということ。」国歌斉唱のために立ち上がってから、大半は老人で占められた聴衆に水島は語りかける。「子どもたちに日本は野蛮な国だと思ったまま成長して欲しくない。」

石原慎太郎東京都知事をはじめとする超保守派の支援を受ける映画のハイライトが先行上映された。そこには兵士たちが気をつけの姿勢で直立する中、大日本帝国軍の将校が馬にまたがって南京に入城する光景を写した日本のニュース映像も見られた。

「日本軍の入城により市内は平静な秩序が保たれるようになった」と字幕は記す。

当時、その地で軍務に就いていた元日本兵の映像も上映され、一般市民に対する大規模な暴行をすべて否定した。

歴史めぐる分裂

水島の映画は亜細亜大学の東中野修道教授の研究に依拠する。先月
(11月)、日本の裁判所は東中野に対し、中国人女性に賠償金を支払うよう命じた。彼女が南京で日本人の暴行を受けた犠牲者と詐称していると主張したためである。

金曜日のシンポジウムで東中野は、この事件全体が当時、南京に住んでいた欧米人がでっち上げたものだと語った。 連合国による軍事裁判では、事件で14万2000人が死亡したとする見方が示された。

「もちろん、犠牲者数については推測の域を出ない。しかし、歴史学者の目から見て、事件を否定するのは無理だ」と東京大学のスヴェン・サーラ准教授(歴史学)は言う。

水島は支持者を得、そのうち5000人から映画の製作費として2億円以上を寄付されたと言っている。しかし、彼の見方に異を唱える日本人もいる。このことは、この国の軍国主義の過去をめぐり国内に深い溝が走っていることを示唆している。

日本の学者や活動家からなる一団が今年、南京をはじめとする世界各地で
(南京)事件に関するシンポジウムを開催している。和解を促進し、彼らの言葉を借りれば、過去と向き合うことができない国、日本というイメージと闘うための試みである。

「どういうものか知りたいので、映画は見に行く。」都留文科大学教授で、グループの一員である笠原十九司は語る。「しかし、恥ずかしい。海外では正確なドキュメンタリーが作られているのに……日本はこんな映画しか作れないとは恥だ。」

2000年代初めに戦争の歴史をめぐる論争から両国関係は冷え込んだ。しかし、その後、日中関係はこの1年で著しく改善した。北京は今年、「南京大虐殺」を訴える口調を和らげた。両国政府はついに不和を取り除けるのではないかと分析する向きもある。

「日本の要人が南京を訪問すれば、問題はだいたい解決するだろう。中国側から手が差し出されている。日本側はそれを握り返すだけでいい」とサーラは言う。

日本の福田康夫首相が今月か来月に予定される訪中の折に、好機を捉えて南京を訪れることも考えられる。

しかし、水島の映画および東中野ら支持者が表明する見方によって、中国が今後、論争を再開させる道が開かれるかもしれない、とサーラは警告する。

撮影完了報告大会に集まった人の人数は書かれていませんが、年齢の面では「大半は老人で占められ」ていたそうです。会場で映画の「ハイライト」が上映され、そこに南京入城式の記録映像が含まれていたようです。また、当時、南京にいた元兵士のインタビュー映像も上映されたことが分かります。シンポジウムからは東中野修道教授の発言が紹介されています。 大会は昼の部と夜の部に分けて行われ、東中野教授は昼の部のシンポジウムに参加したそうです。ですから、記事が伝えているのは昼の部の模様で、夜の部は事情が違っていたかもしれません。

記事は単なる撮影完了報告大会のレポートにとどまらず、後半では、この映画に批判的な歴史学者2人のコメントを載せています。そのうち1人は日本人でないものの、笠原十九司教授の言葉や教授が属する団体の活動を通して、日本人の間にも南京大虐殺を事実として認め、これと向き合おうとする動きがあることが指摘されます。大虐殺をめぐる日本人内部のこうした意見の対立を小見出しで端的に「歴史めぐる分裂」と表現しています。

では、その「分裂」のどちら側に記者はより多く共感を見出しているのでしょうか。非常に表面的に見ると、東中野、笠原両教授という識者をそれぞれの側から出すことで中立を保っているように感じられます。しかし、東中野教授について、生存者を偽者扱いして名誉毀損で訴えられ、日本の法廷で敗訴した(もっとも、地裁判決を不服とし、控訴する模様)という事実が指摘されています。これは読者が同教授の研究者としての資質に疑念を抱く要因になります。

ちなみに、東中野教授はそれ以前に中国の裁判所でも同様の訴訟に敗れています。このことは1月24日付のAPの記事が言及しており、海外でも知られているようです。

その後、南京事件を「でっち上げ」とする東中野教授の発言が紹介されます。そのすぐ後には、東京大学で歴史学を専門とするスヴェン・サーラ准教授の「歴史学者の目から見て、事件を否定するのは無理」というコメントが続きます。このコメントが上の敗訴の指摘と相まって、東中野教授の研究は歴史学研究の名に値しないといっているかのように聞こえます。その東中野教授の「研究に依拠する」映画として「南京の真実」は紹介されています。はっきりいうと、記者は、この映画の主張に学術的な裏付けがあるのか疑っていると思われます。

映画に対する否定的な見方はそれだけにとどまりません。記事の最後はこの1年間の日中関係の改善について語り、希望的な観測さえ示します。しかし、そうした友好ムードも「南京の真実」がぶち壊しかねないとするサーラ准教授の警告で、記事は締めくくられています。どうやら記者は日中間に波乱の種をまく要因としても、この映画を歓迎していないようです。

2007/12/13

南京大虐殺70年後も中国人の心の傷に(Reuters 07/12/12)

今回は、南京事件70周年追悼式典前日の12月12日付でReutersが発表した記事を取り上げます。

http://www.reuters.com/article/newsOne/idUSPEK12275520071212?sp=true

南京の真実」のことは大して書いていない記事ですが、この映画の話題が海外のメディアによって、どのような文脈で、どのように利用されているか見ることも、映画の評判をうかがう上で、何らかの意味があるだろうと思います。

南京に住む年金生活者の向遠松は、侵入してきた日本兵に病身の兄弟を射殺されたとき、11才だった。戦時中の中国の首都が日本軍の苛酷な占領を受けた時期のことである。

70年間ずっと、向は涙ながらに謝罪を待ち続けている。

「一部の日本人は真実を認めようとしない。なぜ真実を否定するのか。過ちを犯したら、それを認めるべきだ」81才の向は、むせび泣きながら、言う。

「この記念式に出るといつも、涙が止まらない。」

木曜日
(12月13日)に中国は、「南京レイプ」の名でも知られる南京大虐殺の開始から70周年を記念する。中国の歴史家は、この町の陥落後数週間で、日本軍が男性、女性、子ども30万人を殺害し、犠牲者の多くが強姦や虐待をこうむったとしている。

連合国による軍事裁判では、14万2000人という死亡者数が示された。しかし、一部の日本の歴史家は、この数字も水増しされていると主張するか、もしくは、大虐殺があったことを否定している。

数年に及んだ歴史がらみの緊張を経て、現在、北京と東京は、つかの間の雪解けを享受している。しかし、その一方で、戦時中の残虐行為を依然として認めようとしない日本の態度は、忘れがたい記憶をもつ中国の老人や、東京はまだ十分な償いをしていないと考える若い世代にとって、障害になっている。

毎年、記念日になると、サイレンの音がもの悲しく南京中に鳴り響き、大半が空襲のずっと後に生まれた市民に、過去を厳格に思い起こさせる。

わき立つ怒り

「日本人は、あらゆる悪事をはたらいた連中だ。彼らを見るたび、はらわたが煮えくり返る。」大虐殺の生存者、張慧霞(チャン・ホイシャ、漢字表記は中国語版による)は、水曜日
(12月12日)に開かれた、南京の東屏門(正しくは太平門)で殺害された犠牲者を追悼する短い式典で、そう語った。

日本兵を逃れ、空き家に隠れたとき、張は10才だった。

「テレビで日本人を見ると、その体を八つ裂きにできたらと思う。それができれば、気分がよくなるかもしれない。」

歴史観の違いをせばめるため、日中の歴史家が共同で作業を進めている一方で、南京
(事件)70周年を記念する数々の映画や本により、傷口が開き、相手を非難する叫びが両国でつのっている。

今月初めに中国は、大虐殺の犠牲者1万3000人分の略歴をまとめ、その死に関与した日本軍の部隊も記した8巻の本を出版した。

日本のナショナリストが支援する水島総監督の映画「
南京の真実」の公開予定を、中国政府は、大虐殺を否定するものとして非難する。

「史実を隠蔽し、犠牲者に敬意を払わないことは間違っていると思う。それは人命の重さを軽んじるのも同然だ」と南京大虐殺記念館の朱成山館長は言う。

70周年を記念して、木曜日に朱は2万5000平方メートルの拡張部分を公開する。そこでは新たに文書、ゆがんだ彫像、工事中に出土した犠牲者の遺品の展示が加わる。

「今回は南京大虐殺の犠牲者を悼む70回目の記念日。未来の世代が歴史のこの一こまを忘れるべきではないと思う。……そしてまた、このような歴史の悲劇が繰り返されず、この世界に永遠の平和があるようにと願ってもいる。」

12日に行われた太平門(記事では「東屏門」)での虐殺記念碑の除幕式で会った生存者2人へのインタビューと、南京大虐殺記念館の朱成山館長の言葉で主に構成された記事です。言うまでもないことですが、「南京の真実」の主張に反して、南京事件の発生そのものに疑義をはさむ様子は、まったく見られません(死傷者数の特定は避けるが)。

南京の真実」は水島監督の名前入りで取り上げられていますが、記事全体の脈絡から、次のように捉えられているといえるでしょう。大虐殺を否定する「一部の日本の歴史家」と立場を同じくするもので、南京事件の「傷口を開き」、中国を「非難する叫び」を日本でつのらせる映画というように。

映画の話に触れた直後に、 「史実を隠蔽し、犠牲者に敬意を払わないことは間違っている」という朱館長の言葉を引用するところには、この映画に対する記者の見方が表れているように感じます。

2007/11/28

日本の南京映画、戦犯を殉難者と呼ぶ(Reuters 07/11/26)

今月初めに「南京の真実」第1部試写会の告知があったにもかかわらず、この映画を正面から取り上げた報道が依然ないということを、先週の投稿で書きました。しかし、一昨日、ついに「南京の真実」を正面から取り上げた記事をReutersが発表しました。

http://www.reuters.com/article/entertainmentNews/idUST30723520071126?sp=true

同社の日本語版サイトで検索したところ、該当する記事は見付かりませんでした(検索に問題があるだけで、記事の日本語版が発表されている可能性は否定しきれませんが)。 代わりに「南京大虐殺に異論を唱える映画『南京の真実』」と題する、撮影現場を取材した動画を見ることができます。内容はReutersの英語版サイトで公開されているものとまったく同じで、ナレーションも英語です。

http://jp.reuters.com/news/video?videoId=71471

動画はさておき、できるだけ多くの人が記事の内容を知ることができるよう、いつものように記事全文の試訳を掲載します。

戦犯として絞首刑となった日本の戦時中の指導者たちはイエス・キリストのような殉難者だった、と完成予定の映画を制作する日本人監督が述べた。ナショナリストの支援を受ける、この映画は、1937年の南京大虐殺を中国による捏造と主張する。

水島総の「南京の真実」は、日本による、この都市
(南京)の攻略と占領を扱った数々の映画の中で、最新のものである。この出来事は、死傷者数をめぐる諸説の著しい違いから、70年間、日中関係の問題の種となってきた。

石原慎太郎東京都知事をはじめとする日本のナショナリスト著名人の支援を受け、一部は寄付金により資金をまかなう、この映画は、ドキュメンタリー部分と、連合国の裁判で有罪となり、戦犯として絞首刑に処された日本の指導者たちの最期の24時間を描くフィクション部分とで構成される予定である。

「彼らは、世の罪を背負うために十字架につけられたイエス・キリストに似ている。かつての日本の良い部分と悪い部分のすべてを背負って死に、絞首台に進んでいった」と水島はReutersに語った。

「私の映画は、真の日本人というもの、そして、彼らがどのように死と向き合うかを描く映画だ。ある意味で、彼らは最後の『七人の侍』だ。」無力な農民を守るため、侍の一団が盗賊と戦う日本の黒澤明監督の名作に触れながら、そう付け加えた。7人の日本人が戦犯として絞首刑に処された。

来春公開予定の水島の映画を中国政府は非難している。しかし、監督によると、自分の調査によって、30万人が死亡したとする北京の言い分は、誤りであることが証明されたという。

「中国政府の立場は今や『大虐殺があったと認めることを条件に、取引をしよう』というものだ。しかし、すべてが嘘で、政治的に動機付けられた嘘を受け容れない以上、それに応じることはしない」と語る。

他の映画はプロパガンダ

第2次世界大戦後の連合国による裁判では、国民党政権下の中国の首都、南京を日本人が占領した際に、一般市民および捕虜14万2000人が殺害されたと推定された。

日本は、侵攻した日本軍により多数の一般市民が殺害されたことを認めながらも、いかなる推計も示していない。

水島は、中国が世界政治で優位に立つために、死傷者数をでっち上げたと主張する。さらに、当時、南京にいた欧米人を共産党の「スパイ」として、彼らによる目撃証言も信用しない。

南京
(事件)をめぐって、この都市の占領から70周年にあたる今年は、7本の映画の製作が予定されている。その中には、南京(事件)を取り上げたアイリス・チャンのベストセラーにもとづく中国の映画も含まれる。水島はこれらの映画の大半を「プロパガンダ」と呼ぶ。

「中国人が世界に売り込もうとしている、自分たちがどのように日本の軍国主義の犠牲になったか、どのように家族や自由を守るために闘ったかを描く映画と同じように、声高に薄っぺらなヒューマニズムを叫ぶ、そんなものを作る気はない」と水島は言う。

戦後の日中関係は、北京
(中国政府)がいう、戦時中に日本兵が働いた残虐行為を認めようとしない東京(日本政府)側の態度によって、損なわれてきた。

日本の小泉純一郎元首相の在任中に関係は冷え込んだ。数百万人の日本の戦死者とともに有罪となった戦犯をまつる東京の神社に、彼が毎年、参拝したことが主な原因である。

小泉は2006年9月に退陣し、後任者が関係修復にこぎ着けた。

後任者らの努力の一環として、日中の歴史学者が両国間の歴史観の隔たりをせばめるために、共同で研究に当たっている。

水島監督の言い分がかなり詳しく紹介されている記事になっています。 しかし、その主張をそのまま書くだけでなく、日本政府も多数の一般市民が日本軍に殺害されたことを認めているといった、監督の意見に反する現実も併せて指摘しています。

記事の最後に小泉元首相時代からの日中関係の変遷が簡単に記されています。この枠組みの中で見ると、「南京の真実」は、中国との関係改善に努める日本政府の動きに逆行するものという位置付けになるでしょう。

記事の中での「南京の真実」の説明を読んでいると、この映画が3部作になるということが書かれていません。 製作側がそうした説明をしなかったのか、それとも、説明を受けたものの、Reuters側で省いたのか、どちらかは分かりません。 もっとも、仮に3部作の第1部という説明をまったく受けずに、南京事件から10年以上後のA級戦犯(この事件と無関係な者を含む)の処刑を再現する映画だといわれたら、取材に訪れた記者は当然、どこが南京映画なのかと不審に思うはずですが。

映画は「ドキュメンタリー部分」と「フィクション部分」からなると書かれています。 日本語で「フィクション」というと、つい純粋な虚構という意味に取られがちですが、英語では必ずしもそうでなく、事実と虚構を組み合わせたものという意味合いも持っています。

他の映画はプロパガンダ」という小見出しの付いた後半部分に、南京事件を題材とする「7本の映画の製作が予定されている」と書かれていますが、それらの題名は書かれていません。 ただし、 「アイリス・チャンのベストセラーにもとづく中国の映画」は明らかにサイモン・ウェスト監督の中・米・英合作映画「紫金山」を指しています。このブログで以前、紹介した8月21日付のReutersの記事は、ほかに次の4本の映画を取り上げています。(1)テッド・レオンシス制作のドキュメンタリー「南京」(ビル・グッテンタグ、ダン・スターマン監督)、(2)香港で製作予定の「南京・クリスマス・1937」(中国語名「南京聖誕:1937」、イム・ホー監督)、(3)前回、紹介したAsian Pacific Postの記事が話題にしていたカナダ製作の「アイリス・チャン ザ・レイプ・オブ・南京」(ビル・スパヒック、アン・ピック監督)、(4)陸川(ルー・チューアン)監督の中国映画「南京!南京!」。 さらに、先月には独・仏・中合作映画「ジョン・ラーベ」(フローリアン・ガレンベルガー監督)が中国で撮影を開始したそうです。これらに「南京の真実」を加えると、7本。それらの映画の「すべて」でなく、「大半」を水島監督は「プロパガンダ」と見なすわけですが、「プロパガンダ」でない例外は自分の映画以外にあるのでしょうか。

2007/08/23

南京大虐殺70年後も世界の映画人動かす(Reuters 07/08/21)

今年末から来年にかけて公開が予定される1連の南京事件関係映画を概観する記事が、一昨日8月21日にReuters社から発表されたので、今回は、その記事を紹介します。

http://www.reuters.com/article/lifestyleMolt/idUSHKG17941120070821?sp=true
戦中の日本軍による中国の都市、南京占領にまつわる辛酸は、70年を経てもまだ和らいでいない。70年という歳月はむしろ、今年公開予定の多数の新作映画を生み出した。

1937年の侵略から70周年に当たり、少なくとも6本の映画の製作が米国、中国、香港で進められ(進度はまちまち)、中には、1年以内の完成を予定しているものもある。それらの映画は、日本の侵略軍が戦時中の中国の首都、南京を陥落させたときの状況を詳細に語る。

中国は、日本軍により男性、女性、子ども30万人が虐殺されたとする。一方、第2次大戦後に連合国が行った裁判では、死亡者数は14万2000人とされ、2万件の強姦の証拠が確認されている。

日本の右派歴史家の中には、軍民2万人が殺害されたと見て、死傷者数は水増しされているとする。ほかに、大虐殺の発生を完全に否定する者もいる。

「南京事件は人の心をかき乱す。ホロコーストやアルメニア人虐殺、カンボジアの処刑場(キリング・フィールド)同様、人間の尊厳を傷付けるものだからだ。」日中関係を専門とするテンプル大学京都
(東京の誤りか)校のフィル・ディーンズ教授は、そう語る。

先鋒となる映画は、米国製作のドキュメンタリー「
南京」。目撃証言や粒子の粗い史料映像を通じて日本軍の所行を詳しく語り、中国人生存者が言う、日本軍の「三光」作戦(殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くす)を描き出していく。

映画の製作者は、自分たちの作品が古傷を開くのでなく、日中間に平和主義的なメッセージを発信することを期待している。

「大体において反戦映画であって、反日映画ではない。」映画のプロデューサーを務めたAOL副会長テッド・レオンシスは、7月の北京プレミアの折にそう語った。

論争と映画

撮影が予定される香港映画「南京・クリスマス・1937」のプロデューサー、リチャード・クワンは、この企画で人間の邪悪な面を執拗に取り上げる気はないと述べる。むしろ、
(南京に)残り、生存者を助ける道を選んだ欧米人宣教師たちの「無私の愛」を強調するという。

「暴力を多く描くことはないので、重苦しい要素をたくさん見ることはないだろう。大虐殺を背景に、欧米人宣教師の目を通して物語を進めていく」と語る。

彼は、(英語で撮影される)この映画の出演者として一流の俳優と契約を結びたいと話す。また、この企画について説明を聞いた外国人は、高い関心を示しているとも示唆する。

製作中の映画としてほかに、故アイリス・チャンのベストセラー『
ザ・レイプ・オブ・南京』をもとにした中・米・英合作の「紫金山」がある。また、カナダの映画監督ビル・スパヒックが、チャンの生涯を描いたドキュメンタリーを12月に公開することを計画している。

他方、中国人監督、陸川(ルー・チューアン)が映画「南京!南京!」の製作許可を既に北京から得ている。

しかし、この話題をめぐって軋轢が続きそうな兆しが見えている。ナショナリスト著名人の支援を得た日本のドキュメンタリー映画が、大虐殺は一切、起こっていないと主張するからである。

今年初め、水島総監督はReutersに対し、映画「
南京」は「嘘とでっち上げ」だらけで、「捏造された証言や写真」を利用するのは、たやすい、と語った。

日本の与党、自由民主党内の保守派の国会議員のグループも、「
南京」をでっち上げとして非難している。

1937年の南京占領を描いた映画が日本で議論を招くのは、これが初めてではない。

1988年、アカデミー賞受賞作「ラストエンペラー」を日本で配給した業者が、南京での日本兵による残虐行為を写した30秒のニュース映画の断片をカットした。

日中関係を専門とするディーンズは、「修正主義史観は、ここ10年で力を増している」と述べる。

ディーンズは、最近の日本の久間章生防衛相の辞任に言及する。この大臣は、第2次大戦中の広島、長崎への原爆投下は必然だったとするような発言によって、タブーとされてきた戦時中の問題に踏み込んだ。

それに対して、「南京大虐殺は起きていないと言ったために、辞任した者はいない」とディーンズは続けた。

南京の真実」を含めて、南京事件関連映画をここまでまとめて取り上げた記事は、3月のTime誌の記事以来ではないでしょうか。ただ、まとめ記事にありがちなことですが、過去に自社の記事で報じた内容が少なからず繰り返されています。例えば、レオンシス制作の「南京」については、7月4日付の次の記事を参照。

http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSPEK16196

陸川監督の「南京!南京!」と中・米・英合作の「紫金山」(仮日本語名「南京災禍」、仮中国語名「南京浩劫」)については、既にこのブログで紹介した「中国人監督、日本の残虐行為の映画化急ぐ」(3月29日)と「新作映画で南京大虐殺70周年記念 」(7月31日)という記事をそれぞれご覧ください。また、「南京の真実」に関する「今年初め、水島監督はReutersに対し、……語った」の箇所も、Reuters社の既発表の記事をもとにしているのでしょうが、記事そのものは未確認です。ただ、それをもとにして、大した改変を加えていないと思われる記事が、カタールのGulf Times紙上に掲載されており、これも既に紹介済みです。

以上の部分を差し引くと、今回の記事独自の部分は、テンプル大学ジャパンキャンパスのフィル・ディーンズ教授と、イム・ホー監督の「南京・クリスマス・1937」(中国語名「南京聖誕:1937」)のプロデューサー、リチャード・クワン氏へのインタビューということになるでしょうか。ディーンズ教授の言葉のうち、「南京大虐殺は起きていないと言ったために、辞任した者はいない」という部分は事実に反するでしょう。1994年に当時の羽田内閣の永野茂門法相が南京大虐殺を「でっち上げ」とする発言のために、辞任しているからです。クワン・プロデューサーの言葉からは、「南京・クリスマス・1937」を欧米の出資者や観客を意識した映画にしようとする意気込みが感じられます。

カナダで製作が進められているチャンの伝記映画「忘れられなかった女性 アイリス・チャン物語」(ビル・スパヒック監督)は、「ドキュメンタリー」と書かれていますが、この映画の公式サイトの情報によると、俳優を起用した「ドキュドラマ」になる模様です。

ちなみに、今回の記事でまったく触れられていない香港のスタンリー・トン監督の「日記」は、今月初めのVariety誌の報道によると、 予算4000万ドルで資金を独・米・日・中各国から募っており、既に当局の許可も得て、12月13日までの公開を目指し、製作を進めているとのことです。

http://www.variety.com/article/VR1117969640.html?categoryid=13

製作会社は、トン監督自身が経営する中国国際伝媒集団の名前が記されています。

2007/08/06

新作映画で南京大虐殺70周年記念(Reuters 07/07/31)

今日、紹介するのは、先週7月31日付のReuters社の記事です。

http://www.reuters.com/article/idUSPEK30079920070731

南京事件70周年関係の別の話題のついでに、「超国家主義者の支持を得た日本の1グループが……」として「南京の真実」の話に短く触れる、このブログでは、おなじみのパターンで書かれています。

火曜日(7月31日)の新華社通信の報道によると、中・米・英各国から映画製作者が集って、南京レイプに関する映画の撮影が始まり、大虐殺70周年を記念する一連の映画に加わることになった。

(映画)「紫金山」は、日本の侵略軍が1937年12月に行った残虐行為を、中流階級の中国人母娘の目を通して描くものになる、と新華社は伝える。中国は、この残虐行為により数十万人の南京市民が虐殺されたとする。

新華社によれば、撮影は火曜日から
(中国)東部の江蘇省にある当時の中国の首都、南京で始まった。しかし、製作者はまだ映画の主演者を明らかにしていないという。

新華社が伝えるアメリカ人プロデューサー、ジェラルド・グリーンの言葉によると、スタッフは製作費5300万ドルのこの映画を、スティーヴン・スピルバーグのホロコースト映画「シンドラーのリスト」のように観客に感銘を与えるものにしたい、と願っている。

中国は、
(南京)大虐殺で非武装の兵士および一般市民30万人が日本軍により虐殺されたとする。第2次大戦後の連合国による裁判では、死亡者は14万2000人とされ、2万件以上の強姦が行われたことが認められている。

しかし、日本の一部の右派歴史家は、殺害された兵士や一般市民は2万人に過ぎず、犠牲者数は水増しされているとする。ほかに、大虐殺の発生を完全に否定する者もいる。

南京南東の山、紫金山にちなんで名付けられ、アイリス・チャンの著書『
ザ・レイプ・オブ・南京』を下敷きにする、この最新作は、新華社の報道によると、中国の江蘇省文化産業集団とハリウッドのエンタテインメント企業ヴィリディアンが製作する。

米国製作のドキュメンタリー映画「
南京」のプレミア上映が、日中全面戦争勃発から70周年を記念して、7月に入って中国で催された。映画は、戦禍の町に難民のために安全区を設置した10余人の欧米人を取り上げる。

何人かの中国人監督も大虐殺関係の映画の製作を急いでいる、と国営の報道機関は報じる。

超国家主義者(ウルトラ・ナショナリスト)の支持を得た日本の1グループが、日本人による残虐行為を否定するドキュメンタリー「
南京の真実」の製作を計画している。

今回の本題は、中・米・英合作映画「紫金山」の撮影開始です。「紫金山」という題名は初耳ですが、プロデューサーのジェラルド・グリーンやヴィリディアン社の名前が出ていることから、これまで「ザ・レイプ・オブ・南京」(仮日本語名「南京災禍」、仮中国語名「南京浩劫」)という題名で取り上げられていたサイモン・ウェスト監督の新作のことと考えられます(TimeScotsmanの記事を参照)。

スイスを拠点とする映画会社オメガ・エンタテインメントのサイトで、この映画のポスターや梗概を目にすることができます。そこでは最近、題名が「ザ・レイプ・オブ・南京」から「南京」に変更されました。

http://www.omegaentertainment.ie/films.php?id=1&s=2

今は題名を含め、いろいろなことが不確定の状況のようです。なお、Variety誌の報道によると、製作はヴィリディアン社からオメガ社に替わったようです。

http://www.variety.com/article/VR1117969640.html?categoryid=1442&cs=1&query=purple+mountain

途中、南京で「殺害された兵士や一般市民は2万人に過ぎ」 ないとする「右派歴史家」が日本に一部、いると書かれています。これは、おそらく6月19日に開かれた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」「南京問題小委員会」の総括記者会見を踏まえたものだと思われます。

記事には書かれていませんが、「南京の真実」も出演者を募り、撮影開始に向けて動いているそうですし、この夏から秋冬にかけて、一群の南京事件関連映画の撮影が進められることでしょう。

2007/06/19

日本の国会議員、中国に反日展示物の撤去求める(Reuters 07/06/13)

先週水曜日(13日)に「南京の真実(仮題)」に言及した記事をReuters社が発表したようです 。

http://in.reuters.com/article/worldNews/idINIndia-30286620070613?sp=true

日本の保守派の国会議員が今日(6月13日)、写真などの展示物を博物館から撤去するよう中国に求める活動を開始した。彼らによると、それらの展示物は第2次大戦前および大戦中の東京の行動に関して真実をゆがめているとされる。

この活動は、当時の中国の首都、南京で中国人の男性、女性、子ども数十万人が日本兵により虐殺されたと北京が主張する南京大虐殺から、70周年に合わせたものである。

主に与党自由民主党所属の議員からなる42人の日本の国会議員の連盟は、日本の体面を傷付ける「捏造された、または事実誤認と見られる」写真や映像などの展示をやめるよう、中国に求めていくことを誓った。

「100を超える抗日記念館が中国各地にあり、反日教育が日々続けられている。」議員連盟の会長となった保守系無所属の平沼赳夫議員がそう語った。議員連盟には町村信孝元外相や玉澤徳一郎元防衛庁長官も加わっている。

「捏造された展示物によって、日中関係にひびが入ることを許すことはできない」と平沼は言う。

北京が言う、1931年から1945年までの間に日本兵が中国で犯した残虐行為を認めようとしない東京側の拒絶の態度が、日中関係を緊張させている。

「日本軍に拉致された慰安婦という説明付きで写真が展示されているが、実は、日本兵に守られて村に帰る女性の写真だったということがある。このような嘘の写真を撤去したい」と自民党の稲田朋美議員は言う。

1993年に日本政府は、日本兵に性行為の相手を提供するために「慰安婦」(大半がアジア人)を置いた軍の売春施設の設置・運営に当局が関与したことを認め、陳謝の言葉を発表している。

中国は、侵略した日本軍により1937年に南京で男性、女性、子ども30万人が虐殺されたとしている。

第2次大戦後に連合国が行った裁判では、約14万2000人という死亡者数を示している。一方、日本の一部の超保守派歴史家は、大虐殺があったこと自体を否定している。

ナショナリスト著名人の支持を得た日本の1グループが今年初めに、日本兵による一般市民および捕虜の大虐殺を否定するドキュメンタリー映画「
南京の真実」を製作する計画を明らかにした。この映画の企画を中国は非難している。

日中関係はここ5年ほど冷え込んでいた。理由は主に、小泉純一郎前首相が日本の戦死者を追悼する靖国神社に毎年参拝したからである。そこには、日本の数百万の戦死者とともに戦犯がまつられている。有罪判決を受けた戦犯を一部まつっていることから、北京はこの神社を日本の過去の軍国主義を象徴するものと見ている。

小泉の後任者、安倍晋三は関係修復に努め、去年10月には就任後2週間もたたないうちに、首脳会談のため北京を訪問している。

これに続いて4月に中国の温家宝首相が「融氷」の訪日を行った。2000年以降、中国の首相が日本を訪問するのは、これが初めてである。

平沼は、彼の会が安倍に靖国参拝を求めることはないとしている。

「目的は、我々の国の名誉にかかわる誤った展示物を撤去させることであって、靖国神社とは何の関係もない」と述べる。

安倍は4月に靖国に供物を奉納したが、対中関係を考慮したらしく、祭礼への参加はやめている。

本題は、あくまで議員連盟「中国の抗日記念館から不当な写真の撤去を求める国会議員の会」の発足です。「南京の真実(仮題)」への言及箇所は5月11日付の記事をほとんどそのまま使い回しているだけです。

ちなみに、翌6月14日の定例記者会見で中国外交部の秦剛報道官は、この議員連盟の要請に応じない姿勢を示したとのことです。

http://www.china-embassy.or.jp/jpn/fyrth/t330127.htm

さて、議員連盟発足と「南京の真実(仮題)」製作との関係の有無ですが、記事を読んだ印象としては、それほど強い結び付きは感じられません。 かといって、まったく無関係かというと、そうでもありません。映画の賛同者の1人である稲田朋美衆院議員も会に加わっているからです。さらに、日本兵による「慰安婦」拉致という写真説明を虚偽とする稲田議員の言葉も、引用されています。そのすぐ後で、軍慰安所の「設置・運営に当局が関与したことを認め」た1993年の河野談話が、紹介されます。このようなまとめ方には、南京事件に絡めて「慰安婦」の問題も取り上げたいという記者の意図を感じます。深読みをすれば、稲田議員の主張と、日本政府の公式見解である河野談話の内容とを対照させる狙いがあるのかもしれません。

日中関係修復に努める安倍首相の姿を紹介する一方で、中国から見れば「日本の過去の軍国主義」の「象徴」である靖国神社に「供物を奉納した」事実も報じており、 対外的には中国との友好に努める首相がもつ二面性を押さえた報道になっています。

2007/05/14

日本、南京大虐殺の真実求める(Reuters 07/05/11)

先週の金曜日5月11日にReutersが再び「南京の真実(仮題)」に言及した記事を発表したので、早速、それを紹介します。

http://www.reuters.com/article/filmNews/idUST20256220070513

南京大虐殺を取り上げた映画や中国で企画される展示に事実と異なる点があれば、日本は指摘して訂正を求めることが必要だ、と金曜日(5月11日)に政府高官が語った。

中国国営新華社通信は3月末に、日本がかつての中国の首都を占領してから70周年に当たる今年、当時の残虐行為を扱った少なくとも4本の映画が中国で計画されている、と伝えた。

「南京事件についてのいろいろな映画や展示が出てくるだろう。事実を精査して間違ったことが中国国内で広がらないよう努力することは、当然だ」と日本の下村博文内閣官房副長官が衆議院内閣委員会で述べた。

中国は、侵略した日本軍により南京で男性、女性、子ども30万人が虐殺されたとしている。第2次大戦後に連合国が行った裁判は約14万2000人という死亡者数を示している。

しかし、日本の歴史家の中には、1937年の大虐殺は誇張されてきたとする者もいる。また、一部の保守派は大虐殺があったこと自体を否定している。

超国家主義者(ウルトラ・ナショナリスト)の支持を得た日本の1グループが今年初めに、日本兵による一般市民および捕虜の大虐殺を否定するドキュメンタリー映画「南京の真実」を製作する計画を明らかにした。このドキュメンタリーの企画を中国は非難している。

去年8月に中国はアイリス・チャンのベストセラーを下敷きに「南京大虐殺」関係の映画を製作する計画を発表した。

北京の言う、1931年から1945年までの間に日本兵が中国で犯した残虐行為を認めようとしない東京側の拒絶の態度が日中関係に影を投げかけている。

日本の安倍晋三首相は関係修復に努め、去年10月には就任後2週間もたたないうちに首脳会談のため北京を訪問している。

これに続いて先月、中国の温家宝首相が「融氷」の訪日を行った。2000年以降、中国の首相が日本を訪問するのは、これが初めてである。

同じ通信社の記事であるため、先日、紹介した3月末のReutersの記事と内容が一部重複しており、今回も「南京の真実(仮題)」への言及は短いです。

今回の記事の本題は下村官房副長官の発言にあります。しかし、当の発言は現在、確認している限り、日本国内のメディアで大きな扱いを受けていません。ところで、下村官房副長官といえば、3月末にラジオ番組での発言がもとでReutersの記事に登場しています(リンク先はswissinfo)。

http://www.swissinfo.org/eng/international/ticker/detail/Japan_PM_aide_denies_military_forced_WW2_sex_slaves.html?siteSect=143&sid=7654576&cKey=1174829887000

その発言の中でも特に物議をかもしたのは、「慰安婦がいたことは事実。 親が娘を売ったということはあったと思う。だが日本軍が関与していたわけではない」という部分です。もしかしたら、この件がもとで下村官房副長官の挙動に密かに注目が集まっていたのかもしれません。

そんな憶測の当否はともかく、今回の報道は、南京事件70周年を記念して予定される一連の映画や展示に日本政府要人も神経を尖らせているということを伝えるものになっています。

2007/04/30

中国人監督、日本の残虐行為の映画化急ぐ(Reuters 07/03/29)

前回に引き続き、今回も3月下旬の「南京!南京!」の製作許可取得に関する報道を紹介します。ニュースソースは、イギリスを拠点に世界展開している通信社のReutersです。

http://www.reuters.com/article/filmNews/idUSPEK21621120070330

同社の日本語版サイトでは、対応する記事が見付かりませんでした。

日本がかつての中国の首都を占領してから70周年に当たる今年、中国で少なくとも4本の南京大虐殺関係の映画が計画されている、と新華社通信が伝えた。

新華社によると、最新作「南京!南京!」は中国当局の許可を得て、4月に撮影を開始するという。この同じ月に中国の温家宝首相が融氷の日本訪問に出発する。

「2年間かけて虐殺関係の資料を集めた。」映画の監督、陸川(ルー・チューアン)の言葉を新華社は伝える。「映画の中では国と国の間の悲しみを浮き彫りにするよりも、歴史をはっきりさせたい。」

新華社の報道では、制作費は2億元(2600万ドル)。映画には、4万人の人々が殺害される場面があり、極寒の東北部吉林省に1930年代の南京を再現したセットが建設されるという。

中国は、侵略した日本軍により南京で男性、女性、子ども30万人が虐殺されたとしている。第2次大戦後に連合国が行った裁判では、約14万2000人という死亡者数が示された。

北京の言う、1931年から1945年までの間に日本兵が中国で犯した残虐行為を認めようとしない東京側の拒絶の態度が、戦後の日中関係に影を投げかけている。

戦時中、政府が関与して女性を強制的に性奴隷にした事実はないと主張したため、非難を浴びた日本の安倍晋三首相は、月曜日
(3月26日)に「今ここで内閣総理大臣としてお詫びを申し上げている」と述べた。

1月には、超国家主義者(ウルトラ・ナショナリスト)著名人の支援を受けて、日本の残虐行為を否定するドキュメンタリー映画「南京の真実」を製作しようとする日本の1グループの企画が、中国の非難を招いている。

南京の真実(仮題)」の話題はわずかに最後の1文だけで、監督の名前も記されていません。賛同者は「超国家主義者著名人」と呼ばれています。

途中、「慰安婦」に関する安倍首相の発言が取り上げられています。「日本兵が中国で犯した残虐行為を認めようとしない東京側の拒絶の態度」を示す新たな一例として、ここに挙げられているような印象を受けます。

さて、以上の記事とは別に、Reutersの記事をソースとして、「南京の真実(仮題)」について、もっと詳しく書いている記事を見付けました。1月25日付で、中東カタールの英字新聞Gulf Timesのサイトに掲載されたもので、「第2次大戦中の大虐殺否定する映画を日本人が企画」という見出しが付いています。

http://www.gulf-times.com/site/topics/article.asp?cu_no=2&item_no=129267&version=1&template_id=45&parent_id=25

これに対応する記事は、なぜか英語、日本語ともにReutersのサイトでは見付かりませんでした。Gulf Times紙所載の他の記事から類推して、見出しや細かい字句までReutersの記事のままとは限りませんが、参考に紹介します。

日本の1グループがドキュメンタリー映画の製作を計画していると昨日、その映画の監督が発表した。この映画により、日本兵が1937年に南京で一般市民および捕虜を虐殺したことは、否定されるという。今回の動きによって、微妙な対中関係に支障が出ることが予想される。
製作委員会によると、この映画「南京の真実(仮題)」は石原慎太郎東京都知事らナショナリスト著名人の支持を得ているという。
第2次大戦後に連合国が行った戦犯裁判では、日本が当時の中華民国の首都、南京を占領した際に、約14万2000人の一般市民および捕虜を殺害したとする推計が示されている。
中国は男性、女性、子ども30万人が死亡したとしている。
「史実の証明に最善を尽くしたい」と水島総監督は電話インタビューで語った。
監督によると、すでに映画のための資料集めが始まっているという。映画は、一般からの寄付金と、監督が経営する製作会社から資金を得て作られるという。
水島によれば、東中野修道が映画への協力を惜しまないという。東中野は大学教授で、大虐殺に関する証言を作り話とする著書のために、昨年、中国で告訴されている。
米国映画「南京」が今週、ユタ州のサンダンス映画祭で上映されている。映画では、1937年の南京陥落後の出来事を目撃した欧米人の手記が俳優によって朗読される。
「はっきり言って、その映画は嘘とでっち上げだらけだ」と水島は言う。
そして、「写真や証言が捏造であることは、簡単に指摘できる。実は、これこそがいい判断の基準になる」と続ける。
昨年8月に中国は、アイリス・チャンのベストセラーを原作にした南京大虐殺に関する映画の製作を発表。報道によると、今月に撮影が始まる予定だという。
これらを含む7本の南京関係の映画が事件70周年を記念して今年、企画されている、と日本の映画の製作委員会はウェブ・ページに記している。
そこには、「誤った歴史認識に基づくこのような反日プロパガンダ映画によって、南京『大虐殺』なる歴史の捏造が『真実』として、世界の共通認識とされる恐れがあります」と記されている。
北京の言う、1931年から1945年までの間に大日本帝国軍が中国で犯した残虐行為を認めようとしない東京側の拒絶の態度が、戦後の日中関係に影を投げかけている。新しく発行される日本の歴史教科書はいずれも、明らかに過失を「糊塗」するための細かな検定を受けている。
両国関係は2005年にここ数十年で最も冷え込んだ。原因の大半は、小泉純一郎首相(当時)が東京のある神社に毎年、参拝したことにある。そこには、日本の数百万の戦死者とともに戦犯がまつられている。多くの批評家は、この神社を日本の過去の侵略を象徴する存在としている。

男性、女性、子ども30万人」、「約14万2000人」、「北京の言う……東京側の拒絶の態度」といったぐあいに、ところどころで、最初に引用した記事と表現や数字に一致が見られます。このことから、Gulf Timesの記事がReutersのそれをもとにしていることは、間違いないでしょう。

全体の論調は、先日、紹介したAPの記事に近い気がします。ここでも「南京の真実(仮題)」の賛同者は「ナショナリスト」と形容されています。また、映画と東中野修道教授(亜細亜大学)との関係も指摘されています。ただ、Reutersは水島監督に「電話インタビュー」をしたということで、米国映画「南京」に対する監督の率直な感想を聞き出しています。記事の最後には、歴史教科書の検定や小泉前首相の靖国参拝にも触れています。どうやら、これらの問題も水島監督の映画製作もともに、戦時中の「過失」を認めようとしない日本の態度の表れとして、捉えられているようです。