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2008/02/15

南京劫掠 映画が発言(Le Point 07/12/20)

今回は昨年12月20日付のフランスの週刊誌Le Pointの記事を紹介します。

http://www.lepoint.fr/content/cinema/article.html?id=215791

70年前の1937年12月半ば、中国の都市、南京は日本人による劫掠に見舞われ、20万人近くの一般市民が殺害された。今日、日中間で映画を介して、もう1つの戦いが始まる。周知のように、争われているのは、事件の記憶であり、数十年来、論争は両国間で大きくなる一方である。最も強烈な出来事は、おそらく日本の小泉首相の靖国神社参拝だったであろう。そこには、南京大虐殺を引き起こしたとして、1948年に有罪判決を受けた松井大将が埋葬されている。2大国の間には数字をめぐる争いもある。一方は、死者は3万人と語り、公式の謝罪を一切しないが、他方は死者を30万人とし、ホロコーストと語っている。

今日、戦いは映画の分野で行われている。というのは、日本の水島総監督が、小泉内閣の元閣僚を含む一定数の政治家の支持を受けて、「
南京の真実」を完成させたところだからである。この映画で監督は同胞にかけられた、あらゆる犯罪の嫌疑を晴らす。しかし、中国側の反撃は激しいものになりそうである。(パヨ社から出版されたばかりの)アイリス・チャンのベストセラー『ザ・レイプ・オブ・南京』を原作とする作品が、「トゥームレイダー」のサイモン・ウェスト監督のもと、中国で撮影中。ほかに香港のイム・ホーの大作「南京・クリスマス・1937」も進行中で、日本人の暴虐から中国人を守ろうとした外国人たちの奮闘を描く。欧米人たちが果たした、この天恵ともいえる働きが、中国人に残された頼みの綱である。中国人市民をオスカー・シンドラーのように救った人物たちに、2本の外国映画がささげられている。1本はジョン・ラーベという魅力的な人物にささげられている。彼は、ジーメンス社により南京に派遣されたナチ党員で、惨事の証言となる日記を残した。配役が注目される(スティーヴ・ブシェミが「グッバイ、レーニン!」のダニエル・ブリュールや「ホロコースト アドルフ・ヒトラーの洗礼」の主演俳優ウルリッヒ・トゥクールと合流、トゥクールがドイツの善きサマリア人を演じる)この映画によってドイツ映画の活性化がさらに続くかもしれない。もう1本の映画「苦海」は、ロジャー・スポティスウッド(ジェームズ・ボンド映画「トゥモロー・ネバー・ダイ」を世に送り出した)が監督し、すでに来年(2008年)3月に中国とアメリカで劇場公開される予定。映画は、オーストラリア人看護婦とともに数百人の中国人孤児を救ったイギリス人ジャーナリスト、ロジャー・ホッグの奮闘を描くものになる。
ドキュメンタリーも負けていない。アルテ
(仏独共同のテレビ局)が4月にミカエル・プラザンのドキュメンタリーを放送した。そして、フランスではアメリカのドキュメンタリー映画(「南京」)の封切りが待たれている。この映画は、今年(2007年)1月にサンダンス映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞(正しくはドキュメンタリー編集賞)を受賞した。

明らかに日本は厖大なハンディキャップを負っている。雪崩を打ってやってくる映画が、日本の態度を変えるのか?日中関係を悪化させるのか?これはおそらく、記録に残る珍しい事例の1つであろう。2006年にアル・ゴアがそうしたように、2008年に映画が歴史の流れを左右することになるかもしれない。

南京事件70周年に当たり数々の映画が製作・公開された、または、その予定であることが、「映画を介し」た「戦い」として、取り上げられています。その「戦い」の中での日本の動きとして「南京の真実」が触れられています。

途中、中国が南京事件での死者を「30万人」としていることと対比して、日本が「死者は3万人と語」っていると書かれています。しかし、「3万人」という数字が何をもとにしているかは、定かでありません。ちなみに、現在の日本政府の公式見解は「多くの非戦闘員の殺害」があったことは「否定できない」が、「被害者の具体的な人数」は「認定」できないというものです。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/qa/08.html

こうした政府の見解をどれだけの日本人が支持するか分かりませんが、犠牲者「3万人」が日本の立場を代表するものだとするかのような書き方には疑問を感じます。ところで、「南京の真実」は「同胞にかけられた、あらゆる犯罪の嫌疑を晴らす」と書かれています。ここから、この映画は、犠牲者を「3万人」をはるかに下回り、ほとんど0に近いとする、日本国内でも平均を外れた過激な主張をするものとして受け取られているようです。

ほかに、南京事件の責任を問われ、死刑となった松井石根が靖国神社に「埋葬されている」と書かれていますが、靖国神社では祭神の埋葬は行っていないはずです。こうしたところから見ても、記者は日本事情にそれほど精通しているわけではないようです。

記事の本題である映画の話に移ると、サイモン・ウェスト監督の「紫金山」やウルリッヒ・トゥクール主演の「ジョン・ラーベ」、アメリカのドキュメンタリー「南京」と言及されている作品の大半は、このブログですでに繰り返し取り上げたものです。その中で、これまで余り話題に上らなかったロジャー・スポティスウッド監督の「苦海」は、オーストラリア・中国・ドイツ合作の映画。現在、ベルリン映画祭と併せて開催中のヨーロピアン・フィルム・マーケット(EFM)で、「黄石の子供たち」の題で上映されているようです。

http://www.berlinale.de/en/filmmarkt/screening_schedule/datenblatt.php?film_id=20080937

一方、昨年4月にフランスで放送された「ミカエル・プラザンのドキュメンタリー」は、ここでは初登場です。ディレクターのプラザン氏は日本滞在経験もある日本通で、過去に連合赤軍を扱ったドキュメンタリーを制作しています。作品は、昨年、フランスで開催された国際テレビ映像フェスティヴァル(FIPA)に入選しており、日本語による同フェスティヴァルの広報サイトに「南京」という題名で簡単な紹介文が掲載されています。

http://www.fipa-japan.jp/report_07.html

それによると、「被害者側、中国人の発言だけではなく、虚妄と主張する日本側の発言とその真意への目配り」に作品の特長があるそうです。

さて、南京事件に関する、さまざまな映画を紹介した後で、「明らかに日本は厖大なハンディキャップを負っている」と書かれています。「南京の真実」が日本を代表しているといえるか疑問ですが、いずれにしても、この映画が今回の「戦い」を制する見込みは、極めて低いと見られているようです。

なお、記事の最後で「2006年にアル・ゴアがそうした」といわれているのは、地球温暖化の危険を訴え、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した映画「不都合な真実」(デイビス・グッゲンハイム監督)のことです。