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2008/01/07

1937年「南京大虐殺」の解釈さまざま(Vancouver Sun 07/12/14)

今回は、年が替わってしまいましたが、昨年12月14日付のカナダのVancouver Sun紙の論説を取り上げます。

http://www.canada.com/vancouversun/news/editorial/story.html?id=a5ee988f-b445-4e20-b5e6-156e5d354532

70年前、日本軍が中国の首都を占領したとき、何が起こったか正確に説明するよりも、「南京大虐殺」がどのように政治に利用されてきたかを語る方が、ずっと簡単である。

1937年12月12日
(現地時間13日)、松井石根大将率いる日本軍は中国中部の都市、南京に入城。町はほとんど放棄され、蒋介石総統の国民政府の兵士がわずかに守っているだけであった。

中国の言い分によると、日本兵が暴徒と化したという。町に残った22人の外国人の報告が、これを裏付けている。

その後数週間にわたり、彼らは30万人に上る中国人一般市民および敗残兵を、多くは最も残忍な方法で、殺害したとされる。8万人もの成人女性および少女が強姦されたといわれる。

他方で、プロパガンダ的な目的のために話は大きく歪曲または誇張されている、と説く声も、すべてでないが、たいていは日本から当然、上がっている。その言い分によると、プロパガンダの担い手は初め国民党から後に現在の北京の共産党政権に変わり、目的は、アジアおよび世界で日本を中傷することにあるという。

大多数の日本人の見方では、南京占領中に相当の「不法殺害」があったことは認められている。しかし、中国人一般市民の死亡者数を1万人から4万人とする向きもある。

水島総監督のような少数の超国家主義者(ウルトラ・ナショナリスト)は、大虐殺はなかったとし、すべてを中国のプロパガンダとする。

これこそ近日公開予定の同監督の映画「
南京の真実」の主題である。

しかし、この映画は競合する多数の作品に囲まれることになる。劇場ないしテレビで最近、公開された、または、まもなく公開される南京大虐殺に関する映画は、10本近くを数える。そこにはドキュメンタリー映画も劇映画も見られる。

何本かは中国または香港の監督が制作し、米国やドイツの作品もある。

カナダも、中国系アメリカ人作家アイリス・チャンを取り上げたドキュドラマで参入している。大虐殺をめぐる現在の議論は大部分、チャンの著書『
ザ・レイプ・オブ・南京』によって規定されている。

1937年以来、南京で何が起きたかという問題に、多種多様な解釈が加えられてきた。そして、それらの解釈は常に、そのときどきの状況や日中関係のあり方に根ざしてきた。

それゆえ、大虐殺70周年を記念する中国の姿勢が、これまでに比べて非難の調子を弱め、ここ数ヶ月の日中関係の全体的な改善を反映していると報道できることは、喜ばしい。

しかし、北京が示す大虐殺の見方は依然、中国の学校の生徒に効果的にナショナリズムを植え付ける挿話となったままである。さらに、南京大虐殺に関する展示がある国内の無数の記念館や博物館は、ナショナリズムを助長し、かつ、共産党の政治的正当性を補強することを意図したものである。

逆に、日本では大虐殺の話題に対する反応は世代や政治的な立場によって、まちまちである。

証拠に基づいた大虐殺の情報に日本の一般大衆が初めて直面したのは、1945年以降の戦犯裁判でのことだった。この裁判で松井大将ら日本の指揮官の死刑が決まった。

1970年代に中華人民共和国が国際社会に参入するまで、南京
(事件)の話題が再び問題になることはなかった。それが日本で特に問題とされたのは、戦時中に皇位にあった昭和天皇が1989年に亡くなってからである。その死によって、戦争や軍が犯した残虐行為に対する再検討が活発になった。

1993年、初の非自由民主党政権の首相、細川護煕が1930年代、40年代の日本のアジアへの拡張を「侵略戦争」と呼んだ。2年後、社会党の村山富一首相は日本の植民地支配や侵略に対し、「深い反省の念」を表明した。

このとき検定を受けた学校教科書は、これらの見解を反映したものに書き換えられた。例えば、1997年に検定に合格した7種の中学校歴史教科書のうち6つで、日本軍が南京占領中に20万人に上る人々を殺害したと記された。さらに、そのうち4つは30万人という中国の推計を紹介している。

こうした事態は、少人数だが、影響力のある日本の右翼ナショナリストの間で、反発を呼んだ。彼らは、
(侵略や戦争犯罪は)何もなかったと主張し続けている。中国にとって非常に残念なことに、こうしたグループが自分たち独自の教科書をいくつか検定に合格させることに成功している。

しかし、世論調査の結果、今の日本人の大多数は、自国の過去の行いにショックと羞恥心を感じ、そのようなことが繰り返されてはならないと確信していることが、明らかになっている。

見出しにあるとおり、南京事件に関する「さまざま」な解釈の存在が指摘されています。そこで、それら解釈がどのように捉えられているか、整理したいと思います。

1つは、日本兵により、「30万人」の「一般市民および敗残兵」が殺害され、「8万人」の女性が強姦されたとする中国の解釈。ほかに、上のような話は、中国の「プロパガンダ」により「大きく誇張または歪曲」されたものだとする、若干の例外もあるそうですが、たいていは日本人による解釈。最後に、とりあえず「相当の『不法殺害』」があったことを認める「大多数の日本人」の解釈。

このうち、「南京の真実」は2番目の解釈を取っているといえるでしょう。ただし、大虐殺を「誇張または歪曲」とするどころか、それ自体「なかった」とし、「すべてを中国のプロパガンダとする」と書かれていることから、この解釈の中でも先鋭な立場を取るものとして、受け取られているようです。水島監督を形容する言葉は「超国家主義者(ウルトラ・ナショナリスト)」です。

それら複数の解釈の良し悪しをはっきりさせようとする意向は、感じられません。しかし、南京事件を喧伝する中国政府の動きに、「ナショナリズム」を定着させようとする意図を見ており、同国の立場に批判的な目を向けています。その一方で、南京事件をはじめとする戦争犯罪を認めようとしない日本国内の動きも、「右翼ナショナリスト」と呼んでいて、好ましくないものと見ている感じがします。

後半で学校教科書の問題に触れており、具体的に1997年に検定に合格した中学校歴史教科書の話が出てきます。しかし、実際に、それらの教科書の記述を確かめることはできませんでした。ですから、ここに書かれていることが、どこまで正確か分かりません。意外に思ったのは、「いくつかsome)」という表現を使って、「日本の右翼ナショナリスト」「独自の教科書」複数に言及していることです。というのも、その種の教科書として海外のメディアで話題になるのは、ほとんどもっぱら扶桑社の『新しい歴史教科書』だけだからです。

最後の「世論調査」云々のところは、どのような「調査(複数)」のことをいっているのか、明らかでありません。近年の読売、朝日、毎日各紙の世論調査の結果を見ると、日中戦争や太平洋戦争における日本の行動に侵略の性格を認める人が、認めない人よりも多いということは、いえると思います。 しかし、少なくとも、それらの調査の結果を見た限りでは、「大多数は、自国の過去の行いにショックと羞恥心を感じ、そのようなことが繰り返されてはならないと確信している」とまではいえないと思います。