2007/07/03

レオンシスの「南京」不正是正めざす(Hollywood Reporter 07/07/03)

前回投稿した6月19日に、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬)の「南京問題小委員会」(委員長・戸井田徹)が内外の報道関係者を招いて、総括記者会見を開いたそうで、APやReutersの関係記事がインターネット上でも公表されました。

AP記事(リンク先はInternational Herald Tribune):http://www.iht.com/articles/ap/2007/06/19/asia/AS-GEN-Japan-Rape-of-Nanking.php
Reuters:
http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUST214128

このうちAPの記事では、「南京の真実(仮題)」賛同者の1人で、水島監督と一緒に「チャンネル桜」の番組に出演した経験がある戸井田委員長の「南京で大虐殺はなかったと確信している」 という言葉が紹介されています。 そこで、Reutersがまた「ナショナリスト著名人の支援を得た日本の1グループが……」と例の調子で、この映画に軽く触れることを期待したのですが、今回はそれはありませんでした。

さて、これまでもっぱら映画祭の中で上映されてきた米国のドキュメンタリー映画「南京」が今日7月3日から中国で一般公開されるとのことで、ハリウッドのエンタテインメント業界誌Hollywood Reporterがこの件で記事を発表しています。途中、間接的にですが、「南京の真実(仮題)」への言及が見られるので、今回はその記事を紹介します。

http://www.hollywoodreporter.com/hr/content_display/international/news/e3ie1d5fd3d6e69dbc79dd9c20ca05ca4ce
ドキュメンタリー映画「南京」が火曜日(7月3日)に北京でプレミア上映される。映画は、戦前の中国の首都で1937年に日本軍が一般市民に対して行った大虐殺を、取り上げる。プロデューサーに転じたAOLのテッド・レオンシス副会長が手がけた。

月曜日
(7月2日)にレオンシスは、この映画の製作は、営利のためでなく、昨年秋にAOLの第一線から退いた折に自ら始めた「フィルムアントロピー」(filmanthropy)活動の一環であると語った。彼が中国の首都を訪れるのは、AOLが調査を開始し、4月に当地に事務所を開いて以来、これが初めて。

レオンシスは3つの中国を注視していると語る。1つは、欧米でほとんど知られていない貧しく、農業本位の中国内部。2つめは、中国中央電視台や上海文広新聞伝媒集団に代表される「公式」で、政府主導の中国。3つめがインターネットやWeb 2.0の新しい「ロックンロール・チャイナ」。このうち最後のものが「アメリカ以上に資本主義的だ」という。

「私の意図は純粋なものだ。中国にお願いしたいのは、必要であれば、どのような手段を使ってもいいので、百万の人々が確実に、この映画を見るようにすること。インターネット上で無料で、さらには海賊版DVDでの視聴さえもかまわない」と述べる。

サンダンス映画祭でシンクフィルムとフォルティシモが配給権を購入した「南京」は、レオンシスが200万ドル以上の私財を投じて、製作された。レオンシスによると、中国では香港と上海の映画祭で3月、6月に初上映され、ここ数週間で、国営の中国電影集団により土曜日
(7月7日)から中国の100以上の劇場で公開されることが決まったという。

(米)本国では、この映画は、今なお北京と東京の間で常に論争の種になっている出来事から70周年を控えて(11-12月に)公開される。日本では、少数の保守派のグループが、大虐殺の発生を否定しており、その中には、「南京」に対抗する企画を進める映画製作者もいる。

初めてオリンピックを開催する中国に世界の視線が集まる2008年に、中央電視台はこのドキュメンタリー映画を中国の1億3600万世帯に向けてケーブルテレビで放送する。

映画は500時間に及ぶ記録映像や生存者へのインタビューを編集して、日本軍が上海から南京へ進む過程で行った組織的な虐殺、および周囲の中国人を救うため団結した南京駐在の外国人――ナチのビジネスマンやアメリカ人宣教師を含む――の物語を語る。

反戦映画であるが、政治的な火種にするつもりはなかった、とレオンシスは語る。

「世界中でアメリカ人が不人気なときに、多くのアメリカ人が中国人を助けたという話は、状況改善に寄与するかもしれない。これは『シンドラーのリスト』のようなものだ」と言う。

故アイリス・チャンのベストセラー『
ザ・レイプ・オブ・南京』を読んで、レオンシスはこの、彼にとって最初の映画の製作を思い立った。中国では、中央電視台が映画の製作に携わり、ジョージタウン大の同窓生で、CAA中国代表を務めるレオンシスの友人ピーター・ローアーから後方支援を受けた。

CAAの顧客のウディ・ハレルソンがアメリカ人宣教師の役を演じている。この宣教師が目撃した殺人について記した日記が、映画の中で一部、朗読される。レオンシスによると、ハレルソンは無償で映画に参加したという。

「『フィルムアントロピー』(「変化をもたらす」映画作りという自分の目標をレオンシスはこう呼ぶ)の韻律
(または基準)が映画製作を一変させる」と彼は主張する。

「映画産業は現在、完全に破綻しており、実業家として参入する気になれない。不正を正すために、この映画を作った」とレオンシスは語る。そして、これまでに話をした中国人は、この映画が、中国がこれまでに見た外国のドキュメンタリー映画の中で、最大のものになるだろうと言っている、と付け加えた。

レオンシス制作の「南京」の紹介として興味深い記事ですが、このブログの本来の目的から外れるため、この映画に関する立ち入った論及は避けます。ここでは、記事に2度出てきた「フィルムアントロピーfilmanthropy)」という聞き慣れない言葉に触れるだけにとどめます。

この言葉は、“film”(映画)と“philanthropy”(人類愛、慈善活動)を組み合わせたレオンシスの造語らしく、適当な訳語が思い浮かびません。意味については、Answers.comというサイトの解説が参考になります。

http://www.answers.com/topic/filmanthropy

それによると、「慈善事業や福祉に関心と資金を集めるために、映画(もっぱらというわけでないが、主にドキュメンタリー映画)を利用すること」をいうそうで、このジャンルの映画製作は通常、「映画産業の外に身を置くか、その外側で資金を集めた人々によって、進められる」とのことです。そのようにして作られた映画の具体例として、レオンシスの「南京」のほかに、「不都合な真実」(デイビス・グッゲンハイム監督)や「ファーストフード・ネイション」(リチャード・リンクレイター監督)の名前が挙がっています。

さて、このブログの本題である「南京の真実(仮題)」への言及は、本当にそっけないものが途中に見られるだけで、題名(仮題)も明記されていません。 エンタテインメント業界誌にとって映画関係の話題は関心事であるはずですが、 この記事を書いた記者は、この映画にはそれほど興味がないようです。記事によると、南京での「大虐殺の発生を否定」する日本の「保守派」(「南京の真実(仮題)」関係者を含む)は「少数」とのことです。

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