2007/09/30

日中が外交関係修復(Los Angeles Times 07/02/17)

依然として「南京の真実」関係の報道がない状態が続いているので、今日は、さかのぼって2月17日付のLos Angeles Times紙の記事を紹介します。

http://www.latimes.com/news/printedition/asection/la-fg-chijapan17feb17,1,2739041.story?coll=la-news-a_section&ctrack=2&cset=true

上のリンクで記事本文が閲覧できない場合は、下のリンクからTaiwan Security Researchというサイトで公開されている記事のコピーをご覧ください。

http://taiwansecurity.org/News/2007/LAT-170207.htm
日中がその波乱含みの関係を軌道に戻そうと懸命に努力しているしるしを求めるならば、次の事実に注目すべきである。4年間の禁止を経て、中国人が再び日本米を食べることに同意したのである。

中国は2003年に日本からの米の輸入を止めた。表向きは、北京が積荷の中に害虫を見付けたからだとされる。しかし、この措置には保健上の問題というより政治的な気配が感じられた。やがて、アジアの2大国は互いに相手に対する批判を強めていき、中国諸都市での反日暴動の発生や日本でのナショナリズム的な主張の加熱といった形で、政治関係を緊張させることになる。

ところが、その間にも新しい関係が両国を結び付けていた。急成長を遂げる中国経済が、15年間、脱け出せなかった不況から日本を解放した。中国人は、汚染された大気や有毒水の浄化のためには日本の技術に期待するのが最善だということを認識した。

そして、政治家が会見を拒んでいる間にも、日中の消費者は相手の国の書籍や映画やゲーム、歌謡曲に愛着を感じるようになっていった。

互いに依存する国家を率いているという認識を前に今、日中の政治家は対話を再開している。中国の李肇星外相は4月の温家宝首相訪日の準備のため、今週
(2月15-17日)、東京を訪れた。温首相の訪日は、就任後間もない日本の安倍晋三首相による昨年10月の表敬訪問に対する返礼に当たり、2000年以降で最も重要な人物の訪問になる。

日中の角逐に警戒を募らせる他のアジア諸国にとって、これは吉報である。中国が兵力を増強すれば、日本がワシントンによる迎撃ミサイル防衛を容認して応じるといったように、北京と東京は互いに軍事力を拡張している。また、両国は、日台の非公式の親交をはじめ、領有権を争う海域の底に眠るエネルギー資源をめぐる緊張、両国の過去1世紀の流血の歴史から未だに癒えない感情的な傷といった、いつ紛争の火種になるとも知れない数々の反目を抱えている。

しかし、今、中国の交渉相手との関係がこれほど友好的な時期はなかったと日本の外交官は言う。会見に臨んだ政治家の言葉を伝える報道によると、李は今週、日本の会談相手を前に穏当な意見を示した。北京が人工衛星を破壊する力をもつことを示した最近のミサイル実験に対する日本の懸念に答えて、中国は常に友好を意図してきた、と李は述べる。さらに、1970年代から80年代に行われた日本人の拉致に関して、北朝鮮から回答を得ようとする東京の決定に共感を示した。

一方、安倍は金曜日
(2月16日)の会見を終えて、新しい協調の精神を賛美した。

好機を捉える

この良好な雰囲気はおそらく、日本の小泉純一郎首相が
(2006年)9月に退陣したことによって、可能になったのであろう。その在職中に両国関係は悪化し、中国首脳は国際会議の合間にさえ彼に会うことを拒むほどだった。小泉は靖国神社を訪れることで、北京の首脳の怒りを買った。同社は議論を呼んでいる神道系の日本の戦死者追悼施設で、第2次世界大戦の戦犯も追悼している。

中国人は
(靖国)参拝を、中国各地の侵略をはじめとする日本軍国主義の歴史に対する責任を否定しようとする動きと受け取った。2005年4月には、戦争中の残虐行為の言い逃れをする新しい日本の歴史教科書に対する憤慨から、上海や北京で日本の資産を狙った暴動や攻撃が巻き起こった。

他方、日本の政治家は、中国国内の問題から目をそらせるために民衆の怒りを煽っているとして、北京を非難した。

しかし、靖国訪問の中止を求める中国の要求を小泉が無視する間も、日本の経営者たちは冷静に東京
(日本政府)に対して、強硬路線の外交が活況を呈する中国市場での営業の可能性を脅かしていることに注意を促した。多くの日本の繊維業や製造業の企業は人件費の安い中国へ移転しており、中国は米国を押さえて日本の最大の貿易相手国になった。

そうして、双方は小泉の退陣によって到来した機会をすばやく捉えて、ともかく公的には友好的な外交関係を表明したのである。中国は、国内発展と多くの社会問題に集中するために、今後数十年間、対外政策の安定(ないし、それに近い状態)が不可欠であるとする戦略的な決定に達した。

「将来、東アジアは経済統合に向かう。日中の協力抜きに真の統合はありえない」と北京の
(中国)人民大学の黄大慧教授(国際関係論)は言う。

漸進

北京はまだことを早急に運び過ぎないよう警戒している。このことは、今年、胡錦濤国家主席でなく、温を訪日させて、正常化へ向け部分的にしか歩み出していないことから、読み取ることができる。

反日デモが示したように、中国人一般大衆は政府の政策決定にとって、ますます重要な要因となっている。中国の指導者たちは今や、政策転換を押し付けるのでなく、それを説明し、理解を求める立場に立たされている。

「技術が目まぐるしく進歩するにつれ、通信が迅速になった。その結果、ときには大衆の方が政府よりも早く外交問題について知る場合も出てくる。ますます政府は世論を無視できなくなっている」と黄は言う。

このことは、日中の歴史に関する感情的な問題に最もよく当てはまる。今年は中国人が特に敏感になる年である。南京レイプ70周年を迎えるからである。この事件で日本軍は何万人もの一般市民を強姦し、虐殺したといわれる。中国人歴史家は死亡者数を30万人としている。多くの日本の政治家や学者は、この数字を過大なものとして斥ける。

せめぎ合う歴史

中国では、日本の占領に対する抵抗は共産党公認の歴史の一部である。北京は6000万ドルをかけて南京大虐殺記念館を3倍の広さに拡張している。また、中国東北部の哈爾浜(ハルビン)郊外では、日本の細菌戦部隊跡地に記念公園を建設するために、大規模な緊急調査が計画されている。およそ23棟の建物跡が第2次大戦中の日本の731部隊の本部跡として保存される予定である。同部隊は捕虜を使って生物化学実験を行った。

これらの動きは、戦争が深い傷跡を残していること、そして、その傷跡が善意の外交さえも脇に押しやってしまう力をもっていることを示している。懐疑的な人々は、顕在化したばかりの
(日中)関係の雪解けは長続きしないと主張するが、そこには彼らなりの根拠がある。それは南京大虐殺をめぐって、せめぎ合う映画である。

中国の映画製作者たちは、アメリカ人作家、故アイリス・チャンのベストセラーをもとに、南京での日本人の残虐行為を扱った映画の公開を計画している。

1月に、日本の映画監督で、ナショナリストの水島総が「
南京の真実」を製作すると発表。彼によると、日本人が残虐行為を働いたという主張は、政治プロパガンダであることを暴く映画になるという。

「歴史を正し、正しいことを伝えることが大事だ」と水島は言う。

中国の李肇星外相が訪日したのを機に書かれた記事ですが、その後、中国外相は交代。日本側も安倍首相が辞任しており、記事が書かれてから今日までに経った7ヶ月という時間を感じさせます。

南京の真実」の話題は記事の最後で取り上げられています。記事全体の大まかな流れは、前半で小泉首相辞任により日中に友好ムードが到来していると述べ、後半で日中戦争をめぐる両国間の認識の差がこの和解を妨げかねないことを指摘する、というものになっています。そして、その日中間の歴史認識のずれを示す実例として、この映画が取り上げられるわけです。映画の趣旨は、南京で「日本人が残虐行為を働いたという主張は、政治プロパガンダであることを暴く」ことだと説明されています。ただし、それに対する記者自身の評価は記されていません。

南京事件の犠牲者数については諸説あり、記事の中でこれに触れる際、各紙の記者は彼らなりに気を遣っているようです。ここでは、「中国人歴史家は死亡者数を30万人としている。多くの日本の政治家や学者は、この数字を過大なものとして斥ける」と書かれています。確かに、死亡者数を「30万人」とする政治家や学者は、日本にはほとんどいないでしょう。しかし、だからといって、例えば、1-2万人ほどの殺害はあったとする政治家と、10万人以上の虐殺があったとする学者を一まとめにして、「多くの日本の政治家や学者」とするのは、少し雑に過ぎるのではないかと思います。

ちなみに、記事の中で触れられている、中国で計画される「故アイリス・チャンのベストセラーをもとに」した映画は、中・米・英合作の「紫金山」(中国語名「南京浩劫」、監督は米国のサイモン・ウェスト)のことを指していると思われます。

2007/09/24

レオンシス大いに語る 「ステロイド服用のルネサンス人」に物語あり(AP 07/09/20)

映画「南京」を制作したテッド・レオンシスのインタビューを先週、APが発表しました。その中でほんの1文だけですが、「南京の真実」に触れた部分があったので、今日はそのインタビューを取り上げることにします(リンク先はUSA Today)。

http://www.usatoday.com/sports/hockey/2007-09-20-308897723_x.htm

一瞬、テッド・レオンシスは、「ひどい」ビデオ・ミュージック・アワードでのブリトニー・スピアーズの問題の演技に首を振った。それから、MTVがいかにして再生の機会を逸したか、分析を披露した。

そのすぐ後には、自分がどのように第2次大戦時の中国で起きた残虐行為に没頭するようになったか、そしてついには、サンダンス映画祭で賞を獲得したドキュメンタリー「
南京」を製作し、彼の言う「フィルマンソロピー」を専門とする映画スタジオの創設を考えるに到ったかを語って、一座を夢中にしていく。

一財産を築き上げたAOLの重役という本業を離れて1年、51才になるインターネットの開拓者は、成功した人生の報酬を享受している。映画であれ、自分のNHL
(北米プロアイスホッケーリーグ)チームであれ、死ぬまでにやりたい101のことをこなしていく作業であれ、そして、オンラインの開拓者と聞いて真っ先に想像する日課のブログであれ、気の向いたことなら何にでも、手を出すことができる。

「ここ12ヶ月は人生で最良のときといえるだろう」とレオンシスは言う。

レオンシスが何をやろうとしているか知りたければ、googleでその名前を検索すればいい、と自ら言う。案の定、彼のブログTed's Takeが
(検索結果の)第1に来る。というのは、彼は商売のコツを心得ていて、ブログをそのときどきの話題に合わせ、頻繁に更新し、リンクを構築することで、検索エンジンが常に自分のブログを最初に見付け出すようにしているからである。そこからテッドの全てを知ることができる。経歴、お気に入りのウェブサイト、始めたばかりの映画製作の実績、持論、そしてもちろん、有名なやりたいことのリストまで。このリストは、1987年にアトランタ行きの航空機で恐怖の一時を過ごしたときに、作られた。このとき、飛行機は故障のために危険を冒した着陸を余儀なくされた。

今までのところ、101項目のうち、エミー賞受賞(Live 8コンサートのウェブ放送によりAOLが受賞)からヨットを所有までの75項目をいずれも済ませている。「宇宙旅行」や「世界チャンピオンになる」という目的を達成するのは、もう少し難しいだろう。

何よりも、レオンシスは交際の達人である。彼を知る人は、ギリシア系移民の子として生まれた、この社交家がいかにして、ここまでの成功を収めたか、容易に理解することができる、と言う。

「彼は、私が世界中で会った中でも最高の話し上手の1人に数えられる。ステロイドを服用するルネサンス人だ。すぐにそれと分かるほどの思いやるのある一面がある。」オブジェクトビデオ社のラウル・フェルナンデス会長は、そう評する。同会長は、NHLワシントン・キャピタルズを所有するレオンシス傘下の企業グループの一員でもある。

しかし、今日のレオンシスは、どれだけ多くの話題について話そうと、お構いなしだ。Associated Press
(AP)との最近のインタビューで、彼はメディアの大勢を攻撃した。スピアーズのようなセレブリティの行き過ぎた露出や、NHLが新聞業界を味方に付けようと奮闘していることについて書き立てる、凡庸で「怠惰なジャーナリスト」を非難した。彼によると、新聞業界は固有の問題を抱えているという。

自身も認めているとおり、彼の所有するキャピタルズは数千万ドルを浪費した。だが、チームの価値は、1999年の購入時の8500万ドルから2倍以上になった。チームが今季、2003年以来となるプレーオフへの返り咲きを果たせば、その価値は上がる一方だろう。選手獲得のための赤字経営を経て、レオンシスはチームを再建した。

「新聞、もっと言えば、新たなメディアまでもが我々を叩くので、笑うしかない。それで、『うちのサラリーキャップ(年俸限度額)は2年で3900万ドルから5000万ドルに伸びた』と言ってやる。あなたは誰の身になりたい?」とレオンシスは言う。

15才の娘と一緒にMTVアワードのショーを見たという流れの中の話であっても、レオンシスはスピアーズについてブログに書いたり、語ったりすることをはばからない。

「ショーはひどいものだった。いってみれば、モニーターである私の娘が『もういい。お父さん、そろそろ寝る』と言ったとき、本当に失敗したんだ。」

10代の音楽に関する情報源はテレビからインターネットに替わりつつあり、そういう方向転換が起きたことをMTVは認識すべきだ、とレオンシスは指摘する。レオンシスによると、MTVがiTuneの考案者になっていれば理想的だったという。

「攻め手に回り、一から作り直し、前進していくか、それとも、押しつぶされ、守り手に回り、縮こまっているか、どちらかだ」とレオンシスは言う。

レオンシスにとって最新の壮大な物語は、世界中で熱情をかき立てている。1月にサンダンス映画祭で編集賞を受賞した「
南京」は、ウディ・ハレルソンやマリエル・ヘミングウェイが出演して、近代史上、最悪の部類に属する大虐殺を記録する。1937年から1938年に、日本軍が15万から35万人(聞く人により異なる)の中国人一般市民を虐殺した。何千、何万人もの女性が強姦された。

批評家が「力強い」とか「心を深く打つ」と評する、この映画は、12月に米国の劇場での公開を予定している。中国の映画監督たちが現在、この残虐行為に関して独自の企画を進めており、1人の日本人映画監督が反論の映画を計画していると発表した。

レオンシスがなぜこの映画を製作するに到ったかという説明は、それ自体が面白い物語である。サン・バルテルミ島での休暇中、読むものがなくなったので、現地の書店に行ったところ、見付かったのは、古いNew York Times紙だけ。彼はその新聞を全部、読み始めた。そして、2004年11月に36才で自殺した作家アイリス・チャンの訃報がたまたま目に留まった。

「『子どもがいる、こんな美人が自殺する……拳銃で自分の頭を撃つなんて、何がそんなに嫌だったんだろう?』と言ったのを確かに覚えている。」

翌日、新聞をごみ箱に捨てた。しかし、訃報の載った頁が一番上に来て、そばを通るたびに、チャンの写真が彼をじろじろ見た。

「夕食に出かけるとき、清掃員が部屋を掃除しに来た。文字どおり、捨て去ろうとしていたとき、私は妻に『ちょっと待って』と言った。そして
(部屋に)駆け戻り、ごみ箱のところまで来て、訃報を抜き取った」とレオンシスは語る。

帰宅すると、レオンシスはインターネットでチャンについて調べた。彼女の著書『
ザ・レイプ・オブ・南京』を、それから同じ主題の別の本を読んだ。夢中になってきて、世界を旅して、この大虐殺を調査する38人の人々を雇った。それから間もなく、気付けば、最初の映画製作に取りかかっていた。

「私はこの物語にまさに恋をした。妻からは、この物語に取りつかれていると言われる」とレオンシスは言う。

レオンシスは、特に「
南京」のような、ハリウッドが決して手を出さないような映画をもっと作り、もっと多くの物語を語ろうとしている。すでに彼はスポーツを扱った第2作に取り組んでいる。そして、同じ見通しを持つ映画人のための「ミニスタジオ」を建てるのに適した要地に、ワシントン地域がなるだろうと考えている。

「私は、この『フィルムアントロピー』の概念という、1つの重要な土台を作り上げたと思っている。興味があるのは、語られなければならない、誤りを正す、活発な議論を呼び起こす、ボランティアや募金活動の土台をなす、そういう物語を語ることだ」とレオンシスは述べる。

1993年以来、務めてきたAOLの第一線の仕事から退いて、彼はこのような試みに費やす時間の余裕を得た。以前も1度、彼は引退しようとしている。しかし、同社が広告を財源にした無料サービスの提供に事業を切り換えた際の監督役として、2002年に復帰している。

今回は脇に留まりたいと明言している(名誉副会長の肩書きを得ている)。また、必要とあれば、助言はするが、もはや決定者ではないとも言っている。

「役員会は今でも友だちだ。相変わらず雇われの身でいる。『これをやらなければ』と言って、明け方3時に起きる、その日暮らしの男にはなりたくない」とレオンシスは口にした。

プロアイスホッケーチームのオーナー、15才の娘とMTVビデオ・ミュージック・アワードを見る父親と、レオンシスのいろいろな面が垣間見られるインタビューです。とはいえ、このブログの趣旨からかけ離れ過ぎている部分があるので、ここでは映画「南京」に関係する部分に簡単に言及するだけに留めます。

カリブ海の島でたまたま手にした古新聞に見付けたアイリス・チャンの訃報に心引かれ、1度はごみ箱に捨てた新聞紙をすんでのところで救出したという話は、記事にもあるとおり、「それ自体が面白い物語」だと思います。

記事の中に2度、「フィルムアントロピー」(filmanthropy)というレオンシスの造語が出てきます。この言葉については、7月3日付のHolleywood Reporter誌の記事を紹介した折に、簡単な説明を加えたので、そちらをご覧ください。ここではさらに、「語られなければならない、誤りを正す、活発な議論を呼び起こす、ボランティアや募金活動の土台をなす、そういう物語を語ること」というレオンシス自身の言葉によって、この理念が生き生きと説明されています。レオンシス自身、「南京」を「ハリウッドが決して手を出さないような映画」と捉えていることから、この映画から大した収益を上げることは期待していないと思われます。

さて、このブログの本題である「南京の真実」ですが、これに関係するのは、「1人の日本人映画監督が反論の映画を計画していると発表した」という一節だけです。映画の題名も監督の名前も記されていません。もっとも、その直前の「中国人映画監督たち」の「独自の企画」もいずれも題名、監督名は明記されていません。ここでの話の焦点はもっぱらレオンシスにあるということでしょう。

2007/09/11

南京大虐殺否定する映画を計画(UPI 07/01/26)

ここしばらく「南京の真実」に言及した記事が見られなかったので、今日は、製作発表記者会見直後の1月26日に発表された米国の大手通信社United Press International(UPI)の記事を紹介します。

http://www.upi.com/NewsTrack/Top_News/2007/01/26/planned_movie_denies_nanking_massacre/9722/
日本人監督が1本のドキュメンタリー映画の企画を立てている。その映画で、第2次大戦中に南京で20万人の人々が虐殺されたという話は、中国のプロパガンダに帰される。

南京の真実」の監督・制作の水島総が、木曜日に東京で開かれた記者会見で、企画を明らかにした。2人の国会議員や学者、映画批評家などからなる約40人の人々が応援のために発表にかけつけた、とJapan Timesは報じる。

もう1本のドキュメンタリー映画「
南京」が先月、米国のサンダンス映画祭で上映された。「南京」は1937年当時、この町で暮らしていた人々へのインタビューを織り込んでいる。

アイリス・チャンの著書『
ザ・レイプ・オブ・南京』を下敷きにした映画も製作が進められている。

大半の歴史家は、大日本帝国軍が1937年に南京で20万人の中国人を殺害したと考えるが、水島は意見を異にする。

「正しい歴史認識を伝える責任を痛感している」と監督は述べる。

会見を取り上げた記事の中では、短く、あっさりしたものです。

少し注意して読むと分かりますが、この記事は何点か誤りを含んでいます。 まず、会見があったのは、「木曜日」と書かれていますが、正しくは1月24日水曜日です。 次に、会見に「2人の国会議員」が出席したと書いてありますが、会見に臨んだ国会議員は衆議員10人、参議員2人の計12人のようです。 最後に、ドキュメンタリー映画「南京」が「先月」(2006年12月)、「サンダンス映画祭で上映された」となっていますが、映画祭の開催は1月。つまり、記事が書かれた時点に合わせれば、「今月」になるわけです。「南京の真実」公式サイトによれば、UPI社の記者も会見に「参加」したそうですが、それを疑いたくなるような、ずさんな記事になっています。

この記事が情報源として挙げているJapan Timesの記事は下のリンクからご覧ください。

http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20070125a3.html

Japan Timesは日本の新聞であるため、このブログの原則上、同紙の記事に立ち入ることはしません。

話は変わりますが、以前に水島監督らが南京事件に関連して宣言文をAFP社に送付したことについては、当の5月31日付の同社の記事を紹介しました。宣言文は同社に加盟するフランスの主要報道機関にも送信されたそうですが、その後、フランスのメディアでこの宣言文を取り上げたものは、見当たりませんでした。ところが、フランスの週刊誌Nouvel Observateurの8月16日号の記事が簡単にですが、宣言文に言及しました。

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2232/articles/a352406-.html

そこで、該当箇所のみ訳出します。

日中戦争勃発と南京劫掠からちょうど70年を経て、日本の否定論者たちが、この記念の年を彼らの精神動員のための重要な一こまにしようとしていることは事実である。講演会、研究会、著作の出版を彼らは計画している。ルネ・レモンの「歴史のための自由」アピールをためらいなく曲解する者もいる。この文書が正に政治に対する歴史研究の自律性を擁護するものであることを知らないような振りをして、そうするのである。

先日、ここで指摘したのと同じように、この記事も、水島監督らのアピールを歴史学の自由それ自体を擁護するものとは受け取っていません。

記事は「南京の真実」には一切、触れていませんが、6月に「南京問題小委員会」総括記者会見を開いた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の中山成彬会長や、『「南京事件」の探求』(文春新書)の著者である北村稔・立命館大学教授へのインタビューも入れて、フランス語のものとしては、かなり踏み込んだものになっています。幸い、cm23671881さんのPAGES D'ECRITUREというブログに邦訳があるので、興味をお持ちの方は、一読を勧めます。

http://ameblo.jp/cm23671881/entry-10043885555.html
http://ameblo.jp/cm23671881/entry-10044002903.html
http://ameblo.jp/cm23671881/entry-10044103897.html
http://ameblo.jp/cm23671881/entry-10044237108.html